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第二章 不要完成它
第二章 それを完成させるな
翌日も、透は残された。今回は当番ではない。当番表に、自分で一行書き足したのだ。
鈴は彼を見ると、チョークを背中に隠した。「角、埋めに来たの?」
「モップがけです」透は正直に言った。「角は埋められません。数学、六十二点しか取れなかったので」
彼女は三秒ほど彼を見つめ、ふっと笑った。その笑いはすぐに引っ込められた。陣紋に書き留められそうで、怖かったように。
「完成させないで」透はバケツを置いた。「放課後を終わらせたくないなら」
「呪文は、そういう使い方じゃない」
「じゃあ、呪文は誰が決めたんですか」
鈴の唇がわずかに動いて、答えは出なかった。窓の外で誰かがグラウンドに「もう一球」と叫んでいる。声は遠く、別の季節のようだ。透はモップをかけ始めた。わざと水を、陣紋の欠けた位置まで引いて、そこをもう描けないようにした。
鈴はその水たまりを見て、初めて怒らなかった。
「あなたって人」彼女は言った。「すごく嫌」
「当番は、みんなそうです」