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第一章 香菜与伞
第一章 パクチーと傘
南条は、彼女がパクチーを嫌うことも覚えていた。雨の日、木のある道を歩きたがらないことも。葉の上の水が、まとめて落ちてくるからだ。
彼が傘を差し出したとき、葵は受け取らなかった。傘はふたりのあいだで止まり、透明な境界のように見えた。
「もし、これがゲームじゃなかったら?」自分の声が、そう聞いているのが聞こえた。
「そのときは、もっと早く校門に立ってた。」彼は言った。「ただ、誰もあのルーレットを回さなかっただけだ。」
雨が強くなった。葵は手を伸ばして柄を握った。指が、彼の指に触れた。罰の重さが、急に具体的になった。返したくないほど、具体的に。