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## 挿絵
## 登場人物
台湾版 軽之国度より転載 スキャン:千里朱音 修図:yfqh008 セリュ――主人公。復讐の炎を燃やす亡国の王子。ティファの旗の下で、才能を持て余す日々を送っている。 エトラ――フィガロ魔王国の第七十五(打ち間違えていない。殴らないでくれ)代公主。『白銀の聖女』と讃えられる。セリュの義妹。 ティファ――フィガロ魔王国の第五公主。輅機を操る技を身につけている。 ジェル――フィガロ魔王国の第三王子。セリュの野心を知ったのち、友人となった。 オディネス――フィガロ魔王国の皇帝。『輅機』の魔力で世界を征服しようと企てている。
## 序章
棺に土をかける者は、牧師を除けば、私だけだった。 母の遺体が目の前の墓に葬られて、まだ一時間しか経っていない。墓前に立っているのは、わずか七歳で喪主を務めねばならなくなった自分だけで、牧師はすでに帰り、いまは私ひとりきりだ。 ひっそりとした中庭の墓前とは違い、大きな屋敷のほうからは賑やかな楽の音が聞こえてくる。いま、葬儀に出席するという名目で集まった親族たちが、舞踏会を開いているのだ。 曲が変わった。交響曲だ。神話の聖女を讃えるためのもので、この薄曇りの寒空の下でも、美しい聖女の清らかで缥渺とした調べが聞こえてくる。 「ちっ……!」 私は遠くからその美しい音色を聞きながら、拳を握りしめ、眉を深く寄せた。 葬送の曲など、まったく聞こえてこない。あそこはまるで別世界で、彼らにとって母の死は、親類同士が顔を合わせるきっかけにすぎないのだ。 それにしても、あいつはまだこちらへ来ていない。来るべきなのに。 ……なぜなら、母の夫であるはずの彼は、少なくとも形の上では立ち会わねばならないのだから―― 「セリュ義兄さま、笑って。笑わなきゃ幸せになれないって、お母さまがおっしゃってたわ。」 そのとき突然、小さな人差し指が、そっと私の眉間をつついた。 我に返ると、目の前に、一度も見たことのない少女がいた。私を義兄さまと呼ぶということは、義妹のひとりなのだろう。歳は私より下に見える。ただ、この少女は幼いのに、その面……
## 第一章 作戦同盟となるまでの長い道
爆発、爆発、爆発―― 轟音とともに地面が吹き飛び、砂礫と土煙が視界を覆い、砲撃が豪雨のように降り注ぐ。 それでもコンテナ車は止まらない。全速で疾走し、砲撃をかわし、爆風の渦を突き抜けていく。車輪が少女のような悲鳴を上げ、加速装置は全開、ハンドルは危ないほど回り続ける。 ここは軍事基地を備えた敵国の都市――リットン。市民の姿はなく、烽火だけが空を埋め尽くす街路で、フィガロ魔皇国とシェズキゴールド共和国の両軍が交戦している。 シェズキゴールド共和国の軍事基地は、いまや二箇所を残すのみだ。このリットンと、前方にある、国境を背にした都市だけ。ほかの都市はすべて占領され、現在はフィガロ魔皇国領シェズキゴールド州となっている。 物資で見れば敵軍は完全に劣勢だが、砲火の激しさはフィガロ魔皇国を完全に上回っている。残存兵力の大半をここへ回しているらしく、ここで雌雄を決するつもりらしい。 敵のこうした死に物狂いの攻撃に対し、兵力で勝るはずの魔皇国軍の隊列はひどく乱れている。前線の一部はすでに崩壊し、後退さえ始めている。魔皇国の軍隊は、本当にこれほど脆いのか。 そんな状況のなか、コンテナを積んだ大型高速コンテナ車が一台、単身で敵陣深くへ勇ましく突っ込んでいく。 それを駆るのは、十七歳のフィガロ魔皇国皇族、セリュ=セルグア。 「――うっ!?」 ……
## 第二章 舞え、白銀よ。全力で
『義兄さま、おはよう。本当にきれいな朝ね。』 これはエトラの言葉だが、セリュが聞いたのは、鈴を振るような声でも、PCD越しの生の声でもない。互いの部屋の窓越しに、彼女の唇の動きを読み取っただけだ。 「きれいな声で起こしてほしいんだけどな。カナリアの鳴き声だって、君には勝てないよ。」 『え? そ、そうなの? 私も義兄さまの声、大好きよ。話していると、こういう声がずっとそばにあればいいって、毎回思うの。』 エトラは手にPCDを持ち、落ち着かない様子で視線を逸らした。 深夜の密会の翌朝。セリュは芝生の向こうの別館のある部屋を見つめ、約束どおりエトラと密談を終えていた。 セリュがエトラの読唇をし、エトラはPCDを耳に当て、セリュの部屋に今も設置されたCCDカメラを通して、オフラインでこの部屋の音を受け取っている。 『ところで義兄さま、さっきの、人をからかうみたいな台詞はどういう意味? まだ寝坊してるの?』 「違うよ。昨夜の本音、言い方がひどすぎたから、次に備えて練習しておこうと思って。」 『……いらないわよ、ばか。だって次からは、初めてじゃないんだから。』 エトラは顔を赤くして睨んできた。……女の子との付き合い方は、やはり難しい。 「それにしても、君のCCDカメラは、いったいいつまで付けておくつもりなんだ。プライバシーのためにも、こんなものがあるべきじゃ……
## 第三章 意図は暴かれ、陰謀は裁かれる
ときおり背筋が震える、暗く冷たい朝。 輸送の予定が入っているため、リットン基地はすでに稼働を始めていた。血液が不足しているエトラは療養のため、ヴィダムとともに領事館へ戻る。 セリュは昨夜と同じく閑人を遠ざけたあと、この軍団代理団長の部屋を訪れた。 「あのコンテナ車とコンテナについては、異常に気づいた者はいないらしい。」 セリュがベッドに腰を下ろすと、ぎしぎしと音がした。きちんと身なりを整えたエトラは、上半身を起こしてそのベッドにもたれかかった。 「ここまでは順調だ。軍備の帳簿データが改竄されたことにも、誰も気づいていないらしい。あのコンテナと、監視衛星の飛行時刻などの情報はすでにスパイたちへ流したが、まったく察知されていない。それに武器庫の当直表と、各人の休憩時間表も、すべて把握できた。」 スーツ姿の第五十七公主は、それを聞いて頷いた。 「それはよかったわ。あとは、コンテナ車に積んだコンテナをすり替えればいいのね。」 「ああ。共和国軍が今すぐ降伏されたら厄介だ。総領事の座を奪うまで、なんとか持ちこたえてもらわないと。」 二人はそろって口角を歪めて持ち上げ、こそこそと顔を見合わせて笑った。 このあとエトラは領事館へ戻り、ティファの実弟ベルトランも着任する。 同時に、昼を過ぎれば皇帝オディネスが領事館を巡訪する。 今日は、それほど特別な一日だ。 「それにしても、ベルトランが輅機を剥奪されるなんて、本当に……
## 終章
一夜が明け、今日はエトラの総領事就任式が行われる。 この日の始まりに、セリュのPCDへ一通のメッセージが届いた。 【俺はまだ皇帝じゃない。だがセルグアの民は、しばらく俺に預けてくれ。】 新たにセルグア州総領事を兼任することになった友からのメッセージだ。 【頼む。】 セリュは送信キーを強く押し、ひとり部屋を出た。 既存の皇族と総領事補佐官の肩書きに加え、セリュは今日、総領事親衛隊長という新しい肩書きを得た。だが、厄介ごとの処理を担う部分は、何も変わっていないらしい。 新総領事の就任大典の直前。雑務を終えたセリュは、エトラがまもなく登壇するため、舞台裏の控室へ入った。 「どうしてそんなに遅いの? 今はお立場が違うのよ?」 控室に座っていたエトラが、微笑んで言った。 「立場は悪くないさ。一応、皇族ではあるし。」 「あら、立派ね。もともと王子さまなんだもの。女性にはかなりモテるでしょう?」 「そんなことはない。俺みたいな王子に釣り合う女は、どこかの公主くらいだろう。」 「なに――?」 真っ赤だったエトラは、一瞬で額を押さえ、うつむいた。 「……違うの。待って。今のは本音の告白? それとも、つい口が滑っただけ?」 「ん? 違うよ。なんとなく言っただけだ。他意はない。ごめん。」 「なに? ……謝らないで。」 「……そうなのか?」 「そうなのよ……
## あとがき
ある深夜、久しぶりに有酸素運動をしたのだが、フォームを間違えて筋肉を痛め、眠れなくなった。家の中をうろうろしているうち、ふと思いついた。 そうだ、復讐の話を書こう―― こうして、この処女作『不浄の聖者の神代の詩』が完成した。 はじめまして。新見聖です。 二〇一三年は本当にいろいろなことがあり、私個人にとっても大きな出来事の年でした。 今年起きた出来事のうち、衝撃度第三位は、愛する広島が十六年ぶりにAクラス入りを果たしたことです。「つらい……広島が好きなのに……」。長年この苦しさに耐えてきましたが、ようやく一区切りがつき、本当に幸せでした。とりわけ一番好きな廣瀬選手は、日本プロ野球の連続打席出塁記録を更新し、開幕直後は不振だったこのチームを最後まで支え切りました。長年応援してきた前田智徳選手らが引退を表明したのは残念ですが、それでも来年以降の広島の活躍を、心から楽しみにしています。 今年起きた出来事のうち、衝撃度第二位は、もちろん自分がついに作家としてデビューしたことです。この作品を説明するとすれば、基本はシリアスな魔法ロボット大戦に、信用詐欺の要素を足したもの、と思えばわかりやすいでしょうか。ひとりでは『願い』を叶えられない少年と少女が、互いに『長年心に埋めてきた想い』を打ち明け合い、手を取り合って『青春』を過ごしていく内容、と思えばわかりやすい……