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本スレは s7715810 によって 2012-8-28 23:36 に最終編集されました
《章節目録》
第一章 帰宅
第二章 滅族
第三章 修練
第四章 遠征
第五章 入会
第六章 ジェダ
第六章 ジェダ
銀獅ギルドの中は水を打ったように静まり返り、誰もがエミシリアを見つめていた。この美少女の新人を。
言い終えると、エミシリアはそのままカウンターへ歩み寄り、周囲の視線を無視して依頼帳から任務を探し始めた。レスははっきり見た。彼女が探しているのは四星級の任務だ。思わず息を呑む。同じ新人なら、レスと同じく一星会員であるはずなのに。
ほどなくエミシリアは探し終え、レスを冷たい眼で一瞥すると、そのまま立ち去った。
彼女が去って初めて、ホールは再びざわめきを取り戻した。
レスはすぐ、エミシリアが受けた任務を繰ってみた。一読して呆然とする。なんと忘却の森の奥へ入り、竜族が消えた原因を調べ、有用な情報を持ち帰れというものだった。報酬金はなく、実績点一千のみ。
「これ……これはどういうことだ?」
「兄弟、彼女のこと、知ってるのか?」
ロアが、急に興味深げにレスへ話しかけてきた。
「昔の同級生、かな……ただ……」
「ほう。どうやら二人の仲はあまり良くないようだな。人前であそこまで人を侮辱するとは、まったく予想外の女だ」
レスに世間話の気はなかった。それでも、胸の疑問は口にせずにいられなかった。
「ロアさん、エミシリアはどうして四星級の任務を受けられるんです?」
「ロアでいい。彼女のことだが……会長が特別に推薦してきた新人で、君たちとは違う。あの推薦状を読んだときは、俺も驚いたよ。会長がはっきり、四星の肩書きを与えると指定していた。実力のほうも、任務の結果で分かっている。知ってのとおり、うちのギルドの任務は国がA級と判定したものばかりだ。基本、一人ではこなせない。少なくとも戦士一人、聖職者一人の小隊で協力して初めて終わる。それなのに彼女は一人で四星の任務を片付けてしまう。本当に、恐ろしい女だ」
レスは驚かなかった。ただ薄く笑う。自嘲のようでもあり、誰かを嘲るようでもあった。
「さて、君たちはどの任務を受けることにした?」
このときレスは、もう任務を見る気力を失っていた。傍らのリアは違った。エミシリアの威圧にも動じた様子はなく、真剣に一星の任務を探している。
「決まりました。私たち、これにします」
「おや、ビビ鳥王の討伐か。悪くないな。嬢ちゃん、目の付け所がいい。危険はそれほど大きくないし、ここからも近い。道中も長くない。三人で行けば、三日あれば終わるだろう」
「三人、ですか。でも私たち、二人しかいません」
「へへ。俺にキスしてくれたら、手伝ってやってもいいぜ?」
「えっ……わたし……」
「うふふ、本気にしなくていいから」
リアはしばらく躊躇したあと、素早くロアの頬に口づけし、耳まで赤くしてうつむいた。恥ずかしそうで、愛らしい様子だった。
「はは、この嬢ちゃん、人を喜ばせるのが上手いな。口にキスさせようと思ってたのに、頬とは」
「それはだめです。口づけは、好きな人とするものです」
「へへ、今回は見逃してやる。次はそうはいかんぞ」
「それで、どう手伝ってくれるんですか?」
「うーん……時間的にも、ちょうどいいはずだ。あの子なら、今頃戻ってくる頃合いだな」
ロアが言い終えた瞬間、扉が押し開かれ、黒髪をハリネズミのように束ねた女が踏み込んできた。額には橙と三角模様でできた頭巾を巻き、澄んでよく動く大きな瞳。雰囲気は陽だまりのようで、女物の軽鎧を身につけ、体つきが豊かかどうかは見て取れない。とても小柄な女で、年の頃は十七くらいだろう。
背中に大剣を負い、堂々とロアの前まで歩み寄ると、レスとリアの存在など目に入らない様子で、大きな声で話しかけた。
「ロアのおじさん、ルルブタ討伐、終わったよ。これが証拠。ほら、早く報酬と実績点、計算して」
ロアのおじさん……
レスもリアも呆然とした。この女、少々荒っぽすぎはしないか。口の利き方に遠慮がなく、人を敬う気などまるで感じられない。
「はいはい。この小鬼め、本当に遠慮がないな。ちっとも可愛げがない。顔はなかなかいいのに、惜しい、惜しい」
「ふん。あんたは美女をからかうことしかできないんでしょ。口先ばかりぺらぺら動かして。あたしには通用しないから」
「おや。これでも善意の忠告だぞ。毎日あんな単調な軽鎧ばかり着てないで、少しは気を配って着飾ったほうがいい。そうしないと、将来嫁の貰い手がないぞ」
「もういいから、無駄話はやめて。早く報酬をよ。次の任務、受けなきゃいけないんだから」
「そんなに急ぐのか? まったく仕方ないな。ほら、持っていけ」
ロアが金貨の袋をカウンターに置くと、ハリネズミ頭の少女はすぐ掴み取り、軽く投げてみて、どうやら満足げだった。
「リアさん、見ただろう。あの子だ。名前はジェダ。戦士だ」
リアは慎ましやかにジェダを観察し、ジェダは気にも留めぬ様子で視線を返した。
「こんにちは。わたし、リアです。聖職者です。どうぞよろしくお願いします」
リアはジェダに一礼し、やさしく言った。
「へえ。顔を見ただけで新人って分かるね。来たばかり?」
「うん」
「彼女と、こちらの魔法使いが任務を受けたんだが、二人ともまだ任務に詳しくない。手伝ってやってくれ。君も任務を終えたばかりだろう。無理はするな。三人でやれば、楽になる」
「でも報酬もその分減るじゃん。二人と山分けで、しかも先導までして。足手まといにしかならないよ」
「何を言う。任務なんて、もともと仲間でやるものだろう。なぜ一人で抱え込もうとする?」
「ふん。仲間なんていらない。あたしは一人で……ん?!」
ジェダの顔色が、突然険しくなった。呼吸も荒い。
「どうした?」
ロアが心配そうに尋ねる。
「なんでも……ない……」
ジェダはゆっくり振り向いたが、二歩と歩かぬうちに床へ倒れた。リアはすぐ抱き起こして様子を見る。右手には包帯が巻かれていた。ほどくと、傷口はどす黒く紫に変色している。毒の兆候だった。
「ジェダは大丈夫か?」
ロアがカウンターの向こうから出てきて覗き込む。周囲の者たちも心配して近寄った。みなギルドの仲間で、普段は任務を終えるとここで酒を飲み、任務の心得を語り合う面々だ。
「ルルブタの牙には毒がある。ジェダはきっと刺されたんだろう。応急の包帯だけで済ませ、歩いて帰れただけでも立派だ。毒が深すぎる。右手を切り落とさないと、毒の広がりは止められんかもしれん」
髭を蓄えた男が、冷静に言った。
「まさか。右手を切るだって? それじゃ、この先どうするんだ。ギルドの一員でいることだって、できなくなる」
そのときジェダの呼吸は苦しげになり、体からは汗が止まらない。危ういありさまだった。
「大丈夫。わたし、治療ができます」
リアはきっぱり言い、呪文を心の中で唱えた。両手をジェダの右手の傷口へ置く。リアの両手から淡い金の光が漏れ、ゆっくりと傷口へ溶けていく。しばらくすると、傷口の色は次第に引き、毒は金の光に溶かされていった。
「もう大丈夫です。一日休めば、元に戻ります」
リアは軽やかに言った。さっきの治療など、取るに足らないことだったとでもいうように。苦労も困難も感じさせない。
「すごいな。傷跡まで消えるとは。完璧じゃないか」
「それだけじゃない。かかった時間は一分にも満たない。あれほどひどい毒傷を、こんな短時間で治すなんて、とんでもない」
その場の誰もが感嘆し、リアの実力は一瞬で認められた。
呆然としていたレスも、すべてを見ていた。このとき彼は、リアが強大な聖職者なのだと、さらに確信した。
一件が過ぎた翌日。レスは朝早くに起きたが、リアはまだぐっすり眠っている。
身支度を終えたレスは、足音を殺してリアの部屋へ入った。他でもない。もちろん、家賃をちゃんと取り立てるためだ。
「へへ。家賃が肉体払いになったとはいえ、だいぶ安上がりだな」
レスは、自分の行いへ理屈をこねていた。
眠るリアは、まるで眠り姫のようだった。レスは用心深くベッドへ上がり、顔を近づける。長い睫毛まで、はっきり見えた。まずは耳から攻め、舌をそっと伸ばしてひと舐めする。
次いで頬へ口づけ、最後にリアの赤い唇を奪った。このときリアは、初吻をレスに奪われたことなど知らない。だがレスの基準では、これは初吻のうちに入らない。舌はまだ中へ攻め込んでいないのだから。
ひと通りの愛撫のあと、当然本番だ。レスは大胆に、リアの肉づいた胸へ顔を預けた。幾日も探ってきた結果、リアの胸は決して小さくない。とはいえ、巨乳とまでは言えない。
それでも手触りはすでに十分だった。レスは細心の注意を払って双丘を撫でる。寝間着越しではあるが、感触は悪くない。いまは不意打ちなのだから、心の愉悦は満点だった。
「ん……いや……やめて……」
リアが寝言のように呟く。
いまどんな夢を見ているのかは分からない。それでも悪夢ではないと、レスには断言できた。本当に、寝ているときの宝物だ。
レスがリアの下半身へ攻め入ろうとしたとき、玄関の外から激しいノックが響いた。レスは肝を潰しそうになり、何も言わずベッドを下り、足早にリアの部屋を出た。
「はい」
扉を開けると、ジェダが気まずそうな顔で立っていた。
「君か。何か用?」
「その……」
ジェダはそっと髪を掻き、顔を真っ赤にしてレスへ頭を下げた。
「助けてくれて、本当にありがとう」
レスは合点がいった。彼女が来たのは、リアのためだったのだ。
「俺に礼はいらない。リアはまだ寝ている。ちゃんと彼女に礼を言いな」
同時に、レスは心の中で彼女を一万回呪った。よりによって、こんなときに礼なんて言いに来るからだ。台無しじゃないか。
未完、続く。