付喪神、貸し出します!

NOVEL · SECTION 01 OF 01 · 日本語

付喪神、貸し出します! — Section 1

# 付喪神、貸し出します! ## 序 > https://www.bilinovel.com/novel/2002/71877.html 台湾版。負犬小説組より転載。画像出典:日向の虎牙。入力:↑うちの嫁。おい!小僧!そう、君だ、呼んでるんだ! どこ見てる?いてて!右を見ても左を見ても、僕は見えないよ。今は布に包まれて小さな袋に入れられ、盾といっしょに背負われてるんだ!だから見えないのさ! なに?袋って?僕が誰かって?ああ、僕はとても古い墜

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Contents · 1 sectionsSection 1

01 / 01

Section 1

## 序

台湾版 転載・負犬小説組 おい!小僧!そう、おまえだ、呼んでるんだぞ! どこを見てる?いてて!右を見ようが左を見ようが、見えやしねえよ。今は布にくるまれて小さな袋に入れられ、盾に背負われてるんだからな!だからおまえには見えねえんだ! はあ?なんの袋だって?おれが誰かって?おう、おれは随分と年を経た根付だ。姿は蝙蝠に彫られていて、名は野鉄という。細工がこまやかなせいで、代々の持ち主に可愛がられた。だからこそ、こうなった—— 「付喪神」。 そうさ、器物は生まれて百年もすれば、中には付喪神になるものが出てくる。もともとごくありふれた代物だったのが、こうして見事に「妖」の頭角を現したってわけだ! 妖怪になれば妖力ってやつがつくからな!口も利けるし、人の言葉もわかる。なんといっても、化けたんだからな! だが、いかに高貴なこのおれでも、何もかも思い通りにはいかねえ。人に珍重されるのは皆、値の張る品だ。だから倉庫にしまい込まれっぱなし、なんてこともざらにある。 毎日、あの薄暗い桐箱の中で、一日また一日。いつの頃からか、そんな暮らしに飽き飽きしちまった。 だから、あのとき主人が金に困っておれを売りに出したときは、飛び上がるほど嬉しかったぜ!売られた先は深川の、貸し出しも兼ねる古道具屋、名は出雲屋。 その話を聞いたとたん、慌てちまった。貸物屋ってのは、貸し出しが商売だ。そうなりゃ、箱から出されて、あっちこっちへ貸し出されるに決まってる! 最初のうちは、出るたびに身を縮めて、心配で心配で……

## 利休鼠

一 早朝、ひとりの奇妙な若い男が、江戸・深川仲町の堀川に沿って歩いていた。 男は眉目秀麗、身なりもさっそうとして、どこにも怪しげなところは見えない。波縞の着物をまとい、ひとり足早に進んでいく。 どこかおかしいとすれば、男は黙りこくっているのに、その傍らから話し声が聞こえてくることだ。独り言ではない。三人が代わる代わる話している。男は気にする様子もなく、なおも黙ってとぼとぼと歩を進めた。 大きな日除けの暖簾をかけた店先を通りかかると、中から声をかけられた。そのとき、妙な話し声もぴたりと止んだ。 「まあ!清次さん、朝早くからご苦労さま。今朝はどちらのお店へ?」 「おはよう、女将さん。これから松梅屋へ行くところだ」 清次と呼ばれた男がふっと笑うと、暖簾の向こうの女たちがたちまちざわめいた。清次は暖簾の奥へ挨拶を投げ、そのまま通りの店々を過ぎていった。軒を連ねるのは仲町の料理茶屋で、このあたりは深川でも名高い花街だ。 深川は千代田の江戸城の東にあり、隅田川の川尻、新大橋と佃島のあいだにある永代橋を渡ればそこだ。 江戸三大祭のひとつ、深川祭で名高い富岡八幡宮があり、意気とさっばりを売りにする辰巳芸者で知られるほか、ここは名の通った遊里でもある。 寛永元年に建てられた深川八幡宮の前の茶屋に、花魁たちが入ることを許されてから、このあたりの遊郭はにぎわいを……

## 里叶柳

一 拙者、里叶柳と申す。 いかにも俗離れした名を名乗ってはみたが……いかにも、拙者はもともと俗世に生まれ、生前は痩せ形の端正な若者であった。 されど……お客様、少しばかりお聞きいただけますか。まことに、涙を誘う悲劇なのでございます。かつて恋人もおり、連れ立って芝居を観たものでした。初代団十郎の『大福帳参会名護屋』など。残念ながら病が重く、早くにこの世を去ってしまいました。 日頃の素行がよかったのか、それとも若すぎて悪をなす暇もなく命尽きたのか。いずれにせよ、普通ならば、とうに仏の浄土へ参るべき身でした。 ですが、このまま死ぬのが、どうしても悔しかった! 恋への執心は、自分で思うより深かったのでしょう。ひたすら恋に浸りきり、その暮らしと訣れねばならぬと思うと、苦しさは耐えがたく、意中の人を手放せぬまま、仏の傍らに侍ることなどできるものではありませんでした。 そこで息絶えんとするとき、枕元にちょうど、日頃愛でていた青磁の香炉がありました。いっそ魂をそれに宿し、この世に残ったのです。 極上の香炉で、普段見る青磁より色が明るく、初春に見る柳の葉裏のようであったため、里叶柳と名付けられ、大切に使われておりました。ところが魂を宿してからは、香を焚くとき人影がちらつくと噂され、香炉は古道具屋へ売り払われてしまいました。 そういうわけで、深川の古道具屋兼貸物屋・出雲屋へ参りました。入ってみて、まことに驚きました。なかなか面白いところです! とりわけ店のさまざまな商……

## 秘S

一 初対面の方に名を名乗るというのは、なかなか気恥ずかしいものですな。 されど名も知らねば話も進みませんので、こちらこそ失礼。わたくし、五位と申します。 その名は珍しくて立派だと?いやはや、唐草どの。わたくしもあなたと同じ、人ではございません!江戸っ子の言い方をすれば……ええ、わたくしたちはまさに付喪神、つまり妖怪ですな。 ご覧の通り、五位鷺を描いた雅な煙管でして、なかなかの高級品!でしょう?ですから蒐集家にはずっと大切にされ、気づいたときには百年が過ぎ、器物が魂を得る年頃。それで、付喪神になりました。 付喪神という存在は人とは少々違いますが、江戸では珍しくもありませんよ。いまわたくしとあなたがいる、この古道具屋兼貸物屋の出雲屋にも、仲間が大勢いるでしょう? 小僧どの、付喪神の身でありながら貸物屋へ来たのでは、最初は心配だったでしょう?ええ、貸し出されるのは本当に恐ろしい。貸物屋の商売は品を貸して賃を取る、ですから、それなりに危ない。万が一、ろくでもないところへ貸されて、傷をつけられでもしたら大変です。 わたくしたちのいるこの出雲屋は、若い姉弟がふたりで切り盛りしていて、店もごく小さい!わたくしたちを貸し出さねば、毎日なにを食べていくのでしょう。ですから、不満だからと出ていかれては、あまりに可哀想です。 ふたりとも父母はなく、ほかに身寄りもありません。清次もお紅も、親には縁が薄いのですな。 出雲屋という店は、お紅の叔父が創……

## 似紫

一 おはようございます。初めまして、わたくしは黄君と申します。 皆様と同じく、百年の器物が姿を変えた妖怪、すなわち付喪神でございます。 ご覧の通り、高貴な琥珀で作られた帯留(注十八)です。澄んだ黄が透き通っていることから、この名をいただきました。 この店へ売られ、皆様と同じ棚の上で顔を合わせるのも、何かの縁でしょう。同じく付喪神の先輩方、煙管の五位さま、人形の姫さま、蝙蝠の根付の野鉄どの、櫛の兎どの、掛軸の月夜神の兄貴、そのほか大勢の先輩方、こちらこそ失礼いたします。 ところで……この出雲屋は古道具屋ですよね?以前、そういう店にいたことが一度あるのですが、この店は……どこか少し違うような。ああ、貸し出しも兼ねているのですか?なるほど……恐れ入りますが、貸物屋とは? ああ、貸物屋とは店の品を、鍋釜から着物、はては股引まで、安く貸し出して賃を取る商売なのですね!なるほど、わたくしは見聞が狭うございます。まだ愚かで物知らぬ新参者とお見捨てなく、どうぞご容赦を。 わたくしはずっと日本橋のあたりに住んでおりまして、深川もこんなに賑やかなのだと今さら知りました。本当によろしいことです。以前、わたくしを買い求めた女将方には、いつも大切にしていただきました。ただ……皆様、帯留をあまりにもたくさんお持ちで、わたくしはずっと戸棚にしまわれ、すっかり気が滅入っておりました。 今のように、外の売り声が聞こえる店内で皆様とおしゃべりできるのは、実に痛快です。ですから先ほど主人が出かけるまで、必死に口を噤んでいて、もう堪えきれ……

## 蘇芳

一 やあ、この店でおぬしに会うのは初めてだな?おお、根付の猫神殿か。ようよう。 わしは月夜見。絵の通りの名の、高級な掛軸じゃよ!わしのように見事な月の絵を見つけるのは、そう容易いことではない。 いわく、「月夜見よ月は眼に入り、憶うは万夜、白雪の佳人そばにあり」じゃ! だから皆、わしを千金のように扱い、百年も大切にしまっておった。それで魂を得て付喪神に出世したわけじゃ。猫神殿、おぬしと同じじゃな! いや、それにしても、江戸のような将軍のお膝元では、適当に探しても付喪神にいくらでもぶつかるわい。 ほら、この店にもいい品が結構あるだろう?まだ新しい品ばかりで、付喪神になる年には足りぬが、わしの隣のこの香炉もなかなかのものじゃ。あと九十年もすれば、こいつは口が利けるようになる!えっ、大坂から来たと言うのか? ほう、猫神殿は大坂の生まれか。ならば、こんな遠くの品川で会えたのも、なかなかの縁じゃな。なに?今まで付喪神とはあまり話したことがない?えっ、どうしてじゃ?京のあたりにも付喪神はおるだろうに。 ほう、仲間に出会っても互いに話しかけぬと?いやいや、それはわしも知っておる、知っておる。場所をわきまえて話さねばならぬからのう。こんなふうに話しているところを人に見られでもしたら大変じゃ。妖怪だとみなされて、焼かれてしまうわい。 それで、さっきわしが口を利くのを聞いて驚いたと?いやはや、これは失礼した。わしは普段からこうでな……

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