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Section 1
## 挿絵
## 序
俺の名前はレオ。精霊の探偵だ。 人は俺のことを「トラブルメーカー」と呼ぶ。 誰かが厄介ごとに巻き込まれているのを見ると、 どうしても見過ごすことができないからだ……。 「お願い! 妹を助けて!」 「任せてくれ」と引き受け、調査に乗り出した俺は、事態が少々厄介な方向へ転がっていることに気づく。依頼人のメイリンとともに訪れたコーレアル神曲学院で、事件の射程が想像をはるかに超えていると知った――これは連続誘拐事件なのか? それどころか、死体まで見つかった? おいおい、どういうことだ! 若い女性、神曲楽士、契約を持たない精霊。この三つの共通点は、いったい何を意味する? さらに思いもよらなかったのは、事件の裏に歪んだ悲劇が隠されていたことだ! 男はいくら強気でも、女の涙には抗えないものなんだよな!
## 序章
人は俺のことを「トラブルメーカー」と呼ぶ。 まあ、いい。時には本当にやりすぎることもある。 だが、いつも騒ぎを起こしているとか、お節介が好きだとか言うより、いっそ俺はトラブルそのものの化身だと言ったほうが早い。 正直、その言い方には少し残念な気持ちになる。 たとえば、こういうことだ。 厄介な仕事を一件片づけ、「いつものバーで一杯やってから帰るか」と思いながら夜道を歩いているとき、突然、誰かの悲鳴が聞こえたら――君ならどうする? しかもそれは、夫婦げんかで飛び出すような金切り声ではなく、生きるのも死ぬのもつらい、悲痛な叫び声だ。 見て見ぬふりをするのが、いちばん賢いやり方だろうか? 耳を塞いで聞こえなかったことにして、一杯やる気さえ失くし、家へ駆け戻って布団に潜り、毛布を頭からかぶって、「聞いてない、聞いてない、俺は何も聞いてない」と独りごちる。 それが、いちばん賢いやり方だろうか? どこかで、見知らぬ女が殴られ、犯され、殺されようとしているかもしれない。まったく手を出さないことが、正しい生き方だと言えるだろうか? そんなわけがない! あんなことを容認できるのは、そうする以外、何ひとつやる勇気のないやつだけだ。 だが俺は、そういう人間じゃない。 なら、まず悲鳴のした場所へ駆けつけるのが当然だろう? 俺がわざわざトラブルを招いているわけじゃない。トラブルのほうが、俺を見つけてくる。 つまり、その、まあ……俺はあの夜、彼女と出会った。 その女の様子は、漫画に描かれるどん詰まりそのものだった。 人気のない古い街で、彼女は薄暗い路地の奥へと追い詰められ、逃げる道を失っていた……。
## 第一章 N人の涙は禁忌を破る
1 将都トールバス、ルシェセリス市の西郊外にあるカデナ区には、形容詞が少なくない。 たとえば、旧市街。 たとえば、浮浪者の区域。 たとえば、犯罪地区。 まあ、言いすぎかもしれない。カデナ区は評判ほど大げさではないが、犯罪率が他の地区より高いのは事実だし、ここに住む人間が金持ちでないのも事実だ。 もちろん、風紀も乱れている。 路面に黒い染みがあれば、たいてい誰かの血痕だ。使い終えたコンドームが道端に落ちていても、誰も気にしない。 ここでは、麻薬は煙草より手に入りやすく、銃器は酒より手に入りやすい。 一時間に一度は誰かが殴られ、三日に一人は道端で死に、週末の夜には一人が殺される――そういう街だ。 俺たちがこんな街に事務所を構えたのには、理由がある。 いや、「理由があった」と言うべきだろう。 ゴルディは、この街の人々のために本気で力になりたかった。警察すら受け付けない揉めごとを片付け、一人でも多く救いたがっていた。 彼らは貧しく、教育も受けられず、育った環境も良くない。それでも、とても善良な人々だ。 「ここだ。」 安い、住居と店舗が混在するビルだ。 ところどころコンクリートの剥げた歩道から、七段の階段を上れば玄関になる。階段の脇の鉄扉の奥は店舗だが、この三年、一度も営業したことはない。 「ここ……なの?」 俺のそばで……
## 第二章 盟約者を奪う
1 ヨルドン川は、将都トールバスを南北に貫く三大河川のひとつだ。 源流は北のソルテ山に発し、マルート川と平行して南へ下る。中央街区を直接蛇行し、ヘゲダ市の南端で支流のシルズ川と分かれ、クムリ港からアロニア海へ注ぐ。 スドウ・イレーネの遺体は、その二キロ先、ユドノマキ市とマナカダ市の境で発見された。ちょうど、河川が将都高速道路の高架をくぐるあたりだ。 俺は橋の上で、路肩にバイクを停めた。 大型のバイクだ。 スタンドを立てると、西へ傾き始めた夕日が、銀色に光るエンジンへきらりと反射した。 さっき橋を渡っていたときは、片側三車線の幹線道路を走っていた。 頭上には高速道路、橋の下ではヨルドン川がさらさらと流れている。水質は悪くないが、河口に近いせいで、川面はどんよりした空のように見えた。 俺は欄干に寄り、前方を見つめた。 川の両岸は雑草が茂り、範囲もかなり広い。横長の空き地が、そのまま先へ延びているかのようだ。両側の堤防が歩行者の立ち入りを禁じているのか、人影はひとつもなかった。 もっとも正直に言えば、川の両側はほとんど工場と倉庫だ。こんな場所を散歩しに来る人間もいないだろう。 そしてスドウ・イレーネは、こんな場所に捨てられていた。 「十八人も、か……」 橋の欄干に肘を預けた俺は、息を吐いた。 イレーネのような例がすでに出ている以上、残りも合理的に疑っていいはずだ……。
## 第三章 歪められた絆
1 アレクシアのかわいいミニカーが去るのを見送ってから、俺はバイクにまたがり、病院を後にした。 午前のうちに、一度ホテルへ戻るつもりだ。 バイクは地下駐車場へ滑り込み、専用の駐車枠に収まった。 俺は燃料タンクに掛けてあったサドルバッグを外した。 背負い紐のない袋を二つ、幅の広いベルトでつないだ構造だ。ベルトの部分をタンクやサドルに掛ければ、バッグは左右ひとつずつ、バイクに積める。 もともとサドルに掛けるものなので、名前も「サドルバッグ」という。 何か持ち運ぶときには、これが手放せない愛用品だ。バッグとして使うときはベルトを肩に掛ける。そうすると、袋は胸の前と背中にひとつずつ下がる。 俺はエレベーターに乗り、最上階を目指しながら、ポケットから二つ折りの小さな紙片を取り出した。 紙には、あの奇妙な図形が描かれていた。病院の前でアレクシアと別れたとき、手帳の別のページに同じものを描き、破り取って渡してくれたものだ。 入り組んだ楕円で、どう見ても意味がわからない。 それより重要なのは、どこかで見たことがあるような気もすることだ。 被害者だけでなく、事件の当事者ですらない俺まで知っている――つまり、ごくありふれた図形である可能性が高い。たとえば、レオラバーガーのあの商標のように。 だが、監禁現場の近くで「バフィ・レオラ」を見たという証言が出たとしても、手がかりにはならない。レオラバーガーの店舗はどこにでもあり、大通りを歩いていて見ないことは……。
## 終章
ニケン市警局には、精霊課が置かれていない。 だから捜査はもとより、嫌疑のかかった精霊を拘留するときさえ、他市の警局にある精霊課の施設を借りなければならない。 俺がトールバス市警の精霊拘留所へ放り込まれたのは、まさにそのためだ。 この拘留所は、床も壁も天井も、鉄格子にまで精霊文字が刻まれている。 拘留期間は一週間。 そのあいだにも、何度か事情聴取を受けた。だが一週間後の朝、鉄格子の向こうから俺を迎えに来たのは、見慣れた警官ではなかった。 二人とも、俺にはかなり顔なじみだ。 「おはよう。」 嫣然と笑ったのは、スーツ姿の女性だった。 「少しは懲りた? 金髪さん。」 人間の男なら一目で惚れるほど美しい、俺の顧問弁護士が、苦笑しながら言った。 今日も濃い水色の髪を高くまとめ、白い頭がまぶしい。 「まあ、少しはな。」 俺は鉄格子越しに、彼女へウィンクした。 ただし、その傍らには、例の件を問い詰めるためにもう一人が来ていた。 「お前は本当にのんびりしてるな! 何度牢屋に放り込まれたらわかるんだ?」 眼鏡の向こうで顔をしかめている、気の毒な男。マトリ・マタリスキ監察官だ。 「お前の監察官になってから、俺の勤務評価がどれだけ下がったか知ってるか?」 そりゃ、当然だろう。 マトリ監察官は、クレメント事件のときから俺の監察官を務めている。それ以来、俺の日常の素行を監督する役目だ。場合によっては指導する立場にも立つ。だが……。
## あとがき
「レオが主役の話、読みたいなあ~」 そう言ったのは、実は編集長だった。 『神曲黒』――すなわち神曲奏界ダークネスシリーズ第四巻『暗黒三角』の原稿が上がって、間もないころのことだ。 彼は、あの本で初登場したレオガラを、とても気に入っていたらしい。 「あいつは主役が張れるキャラだよ!」 そうだろうか? 俺はそれからしばらく考えた。たぶん一ヶ月ほど経ったころ、ふとレオというキャラクターを「理解」した――俺が「見た」のは脇役としての彼ではなく、主役としてのレオだった。 「前に話してくれた件、あれ、書けます。書き方がわかりました。」 「ほう? じゃあ、枠をひとつ空けておくよ。」 「は?」 「書こう! レオの話を!」 「書くって、誰が筆を執るんですか?」 「え? もう、もちろん君だよ!」 時期は、西遠二〇〇七年一月。 そう、GA文庫の編集長とは、そういう調子の人物なのだ。 こうして俺は、『神曲黒』の外伝とも言えず、かといって『神曲金』のような独立シリーズとも呼びがたい、奇妙な作品をひとつ書き上げた。 これが『レオの物語』だ。 それ以外に、どう説明すればいいのかわからない。 だからタイトルも『復活者・レオ』とした。題名に色を付けるという定型を外したのも、そのためだ。 『神曲黒』と時間を並行させ、『神曲黒』では描かれなかったレオの活躍を、みんなに見てもらえれば……。