侵略少女と嘘の庭

NOVEL · 日本語

侵略少女と嘘の庭

早川牧生はK中学の2年生。幼なじみの裕貴、唯、琴美の三人と、怠惰な日々を送っていた。ところがある日、牧生は「運命の恋人」を探す占いゲームへの参加を強要される。占いで嘘をついた牧生は、本来いるはずのない「運命の恋人」を探すため、学校の裏庭へ向かった。そこで現れたのは、なんと校内の……

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## きっかけ

『侵略少女と嘘の庭』 あらすじ: 早川牧生はK中学の2年生で、幼なじみの裕貴、唯、琴美の3人と、だらだらした日々を送っていた。ところがある日、牧生は「運命の恋人」を探す占いゲームに参加させられる。占いで嘘をついた牧生は、本来いるはずのない「運命の恋人」を探すため、学校の裏庭へやって来る。そこに現れたのは、校内でも有名な美少女で、気性の荒い、どこか不思議な少女——中山莉児だった。牧生のチームに加わった莉児は、夜になると強引に泊まり込もうとしたり、みんなで出かけると嘘をついて牧生を呼び出したりする。そんなことが続いていく。幼いころから婚約を交わし、仲のよかった4人の関係は、やがて少しずつ変わり始めて——。苦しく、そして温かいファンタジーストーリー。 第一章 きっかけ この街のどこかに、こんな美しい呪いがある。 姫君が、ひそかに戦士を募っている。 ★★★★★★★★★★★★ 「絶対にだめ」 「今回だけ、引き受けてよ」 「一度だってだめ」 「私も人に頼まれてるの」 「なら断ればいい」 「私が断り下手なの、知ってるでしょ。じゃあ牧生が断ってくれない?」 頼まれたのは僕じゃないのに、なんで僕が断らなきゃいけないんだ。牧生はそう言い返したかったが、そんなことをすれば、だんだん喧嘩になっていくだけだ。彼は長い両腕を胸の前で組み、ため息をついた。 「わかってるよ、それは……

## キラ----悪魔・中山

第二章 キラ——悪魔・中山 琴美は莉児の視線に圧されながら、ここへ来た理由を一通り話した。 「……まったく、馬鹿ね」莉児は肩をすくめた。跳ね上がった細い髪が香りをまとい、顎のあたりへ落ちる。 「本当に馬鹿」彼女はもう一度言った。意外なことに、今回は機嫌がよさそうで、ぼんやりした声に笑いが混じっている……まあ、確かに馬鹿みたいだ。その点は僕も同意する。牧生は表面上は腹を立てているように見せながら、心の中ではうなずいていた。 琴美は口をへの字に曲げ、頭を下げた。 唯は困ったように眉を寄せ、斜め下を見てため息をつく。 莉児はもう一度、牧生を見た。 「何?」 「なんでもない」 小さな唇の端が上がり、笑みを浮かべる。「ふふふふふ」だが、それは低く、息だけが漏れるような笑いだった。笑い声は途切れない。それから彼女は、とても速い足取りで立ち去った。 容赦なく鳴り響く蝉の声に、彼女の笑い声が混ざる。牧生の耳には、それがただ恐ろしい音にしか聞こえなかった。 ——帰り道 「中山か!」 経緯を聞いた裕貴は、意外なほど真剣で、ショックを受けたように眉をひそめていた。 「まずいのか?」 「だいたい」 牧生は曖昧にうなずいた。笑って済ませるつもりだったのに、今はもう笑えなかった。「僕は何をやってるんだろう……」 裕貴は額にかかった長い前髪をかき上げ、道端の駐車場の低い塀へ歩いていく。 牧生と唯、琴美は裕貴を囲むようにして足を止めた。 この駐車場は、K中学の生徒たちが放課後に相談をしたり、こっそり告白したりする場所だ。似たような場所が、周囲にあと4つある。 「彼女の肩を持つつもりはない。今の問題は——……

## 内心(前編)

第3章 内心(前編) 「では、2学期の班を決めます」学級委員が黒板の前で言った。 これは2学期最初の学級会で話し合う議題で、ずいぶん前から決まっていたことだ。 「男女混合の6人で1班。男子2人と女子2人で組んだ4人が基本の組み合わせで、クラスの男女混合班とします。話し合いがまとまらなければ、くじで決めます」学級委員は板書をしながら説明した。班は学習のチームとして一緒に勉強し、交代で掃除をする。もちろん遠足や文化祭のような行事も一緒に動くので、誰と組むかはとても重大なことだ。 「どうする」それぞれが組み合わせを相談し始めたとき、裕貴はすぐに牧生のところへ来て相談した。 当然、裕貴と牧生は疑う余地がない。琴美と唯も一緒だ。4人で組むなら、あと女子か男子を2人探せばいい。 「……僕はどっちでもいい。小美と唯じゃなくてもいいんだ」裕貴は小さくぼそりと言った。 「ねえ、私たちも牧生と裕貴の班にしよ?」琴美は唯の手を引いて、彼らのそばへ来た。牧生は隣の裕貴をちらりと見た。「いいよ」裕貴は一秒ほど間を置いてから、うなずいた。そうだよな。慣れきった4人組には少し抵抗があるけれど、小美たちの誘いを断る理由なんて、別にない。牧生はその気持ちをよくわかっていたので、結局何も言わなかった。 「じゃあ、川村と吉池も誘うとしたら——」 「私は牧生と組むつもり」 「え」 突然割り込んできた一言……

## 庭の戦士

第四章 庭の戦士 これは呪いだ。 悪い子の呪い。 悪魔になった、あの子。 取引をして、 心を石のようにした。 彼の心のどこかに、巨大な時計の針が一本ある。 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ その日の午後、牧生は予定どおり家で時間を潰していた。 机に向かい、椅子の上であぐらをかき、黙々とMSのパーツを外して加工する。本に書いてある理屈どおり、加工する箇所に印をつけ、それからカッターで斜めに切り込む。こうすれば、MSの手首と武器の可動域が広がる。この作業は、ほとんど胴体にまで刃を入れる必要があり、技術が要る。そのあと小さな紙やすりで、でこぼこしたところを平らに磨く。磨きすぎて切り口が大きくならないよう注意し、印をつけたところだけはできるだけ薄くする。 模型作りはいいものだ。心が一点に集まり、いろいろなことを一時忘れられる……今朝起きたことも、今はゆっくりと、心の底のどこかへ沈んでいく。 ——呪いだから、悪い子になるのは仕方ないことなのか? 口に出したとき、牧生は自分の気分が最悪のところまで落ちているのを感じた。 「……」 彼は、莉児に「そんなんじゃない」と言ってほしかった。 しかし彼女は、最後まで何も言わなかった。 「呪いだとしても、証拠くらいあるだろ。怖い映画を見たとか、携帯にそれらしいメッセージが残ってるとか」 「そんなの、映画の話よ」莉児の口調も、かなり不機嫌だった。牧生がずっと抑えていた悪い気……

## 内心(後編)

第五章 内心(後編) 翌日、牧生は莉児の庭へ行った。MSの外装の塗装を、仕上げなければならない。 あわせて、昨日持ってこなかった、星型のマークが貼ってある工具箱も持参した。 「教会の仕事、しなくていいの?」 「もう終わった。日曜は礼拝があるから、先に済ませておくの」 それに今は先生も出かけていて、ほかの子どもたちは師母が見ているから、問題ない。牧生は莉児の説明を受け入れ、予定どおりMS作りを始めた。 「ここ、机ないの」椅子は昨日、裏庭から運んできたものだ。 「我慢しなさい」 「なら、仕上がりに文句は言わないでくれよ……もともと僕、塗装は苦手なんだ。筆を使うのが嫌いだ。ずっとエアブラシが使いたかったけど、高い」牧生はそう言いながら工具箱を開け、白いマーカーを一本取り出した。 「どうして白いところの上に、さらに白を塗るの?」 「機体に色が乗りやすくするためだよ。塗装専用のペンなんだ」牧生は手の中のペンをひらひらと振り、まず外から見えないところ——両足の内側——から塗り始めた。 「あー」やはり机がないと安定しない。インクが境界をはみ出した。牧生はティッシュを手のひらに握り、塗らない部分を覆いながら、少しずつ色を乗せていく。白ならまだこうして塗れる。青を塗るときは、どうすればいい。少しずつ塗らず、一気に広い面へインクを乗せられたらいいのに…… 「今の顔、すごく真剣ね」 牧生は答えなかった。ちょうど、塗装がいちばん難しいところに差し掛かっていたからだ。 「まるで、複雑な医者の手術みたい」 なら静かにしてくれ。そうじゃな……

## 伝説の続き

第6章 伝説の続き 「すみません」 牧生は、先にじっと見てきたのは向こうのほうだと思いながら、カウンターへ歩み寄った。 「大岩さんですか?」 目の前の相手が、アスリートや芸能人のような独特の雰囲気をまとっているならまだしも、どう見てもただの普通の学生にしか見えない。 しかし今この瞬間、この人は牧生の目には、そうした有名人よりはるかに輝いて見えた。よく見ると、どこか神秘的なところさえある。 「違います」 相手の返事は、一瞬で牧生の緊張を完全に打ち砕いた。 「ずっと、人に頼まれて物を届けに来ているだけなんです」 「……そうでしたか……すみません……」 牧生はたちまちがっかりした。せっかく勇気を出して、憧れていた先輩に話しかけたのに、結果は……ついてないな。神秘的も何もない。帰ろう。 「彼はここの常連で、大岩先生の作品が大好きなんです。大岩先生のファンですよ」小林さんが横で牧生を紹介した。 「あ、その、僕の紹介はしなくていいです」そう紹介されて、牧生はかえって気恥ずかしくなった。 「へえ、そうなんですか」大岩先生の代理人は曖昧に会釈した。牧生も仕方なく会釈を返す。 「でも今回の作品、本当にいいですね。牧生くんも見てみなさい」 牧生は次でいいやと言おうと思ったが、カウンターに置かれた新しい作品に目をやって、そのまま固まってしまった。 おお——すごい。ZGMF-1001。前に買ったのと同じ機体だ! 塗装の層がはっきりしていて、切り口もちょうどいい。このレベルは、やっぱり逸品だ。 牧生は熱い視線でMSを見つめ続けた。頭の中にあるのは……

## 月の川

第七章 月の川 「中山、夜のうちに逃げたらしい」 それが、牧生が最初に聞いた、衝撃的な知らせだった。 「は?」 裕貴の話を聞いて、牧生は思わず驚き、高くなった声が教室に響いた。 3日間の中間テストの、最終日だ。1日目も2日目も、莉児は休んでいた。牧生は、具合が悪いのか、それともまたわがままをやっているのかと、つい考えていた。とにかく今日は試験が終わったら、教会を見に行こうと思っていた。 「理由は? お金の問題なのか」 牧生は声を落とし、身をかがめ、なるべく目立たないようにして裕貴に尋ねた。 「違う。理由は僕にもよくわからない。あそこの牧師が、詐欺の疑いで、もう逃げたんだって」 「詐欺」 「そう。信者や、故郷で付き合いのあった人、福祉事業に関心のある人たちから寄付を集めて、その一部は子どもたちの教育費だと言い、残りの資金は会社への投資に失敗した、とか……実際に投資があったのかどうかも、まだわからない。資金を使い込んだのは牧師じゃなくて、牧師に関係する一団だという話もある」 牧生の目の前に、一度顔を合わせただけの、細長い目をした牧師の顔が浮かんだ。素朴で実直な人かと言われれば、そんな気もする。牧生は彼について、特に深い印象を持っていなかった。 「前から噂はあった。たくさんの子どもを引き取って生活を見ている、印象のとてもいい牧師だって。だから多くの人が信じた、と父さんが言ってた。うちがよく弁当を届けている、あの会社の人たちが、大……

## その後

第八章 その後 教室は、いつものように騒がしい。 紙を裂く音、机を動かす音、劇の板を切る音。 窓の下で、女の子たちが校門の看板を飾るための飾りを作っている。 今日は授業が一日休みで、みんな明日の文化祭の準備をしていた。 「牧生、サボってないで手伝って」 牧生は椅子を脇へ放り、そのまま机の上に座り、ずっと窓の外を見ていた。そこへ琴美が話しかけてきた。 「何見てるの?」 「窓の外」 「そっちじゃなくて、手に持ってるもの」 「——あ」 気づかないうちに、ずっと手に持ったままぼんやりしていた。牧生は白い紙を一枚取り上げ、その上にかぶせた。 「へえ、手紙みたいね」 「……違う」 「うらやましいなあ——学校にまで持ってきて見てるなんて」 「違うって。うるさい」 牧生は慌てて片手で手紙をポケットに押し込み、もう片方の手で眼鏡を直し、ばつの悪さを隠そうとした。 「彼女、何て書いてあるの?」 「……最近、元気だって」 琴美はそれでも諦めず、問い続けた。 「そんなはずない」 牧生は先に階段を下り、長い廊下を通り、旧校舎のほうへ歩いていった。 あとの中身は、絶対に彼らに見せられない。 今思えば、あれは嘘が生んだものではなかった、と誰にも否定できない。 運命か。 「ねえ、あなたたち、本当にそんなに仲がいいの?」 誰も口にしなかった。それは悪いことでもない。このまま、なるようになっていくのも悪くない。 裕貴の視線が、ふいに琴美へ集まった。 説明のため、牧生は莉児の手紙を3人に見せ……

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