小さな魔女と飛天狐

NOVEL · SECTION 01 OF 01 · 日本語

小さな魔女と飛天狐 — Section 1

# 小さな魔女と飛天狐 ## 挿絵 > https://www.bilinovel.com/novel/1838/115558.html ![](https://img3.readpai.com/1/1838/115558/33538.jpg) ![](https://img3.readpai.com/1/1838/115558/33540.jpg) ![](h

Read full book on one page (1 sections) ↗

THE READING ROOM

Text in 日本語

Contents · 1 sectionsSection 1

01 / 01

Section 1

## 挿絵

## 第一章

それは光の差さない、昏い夜だった。 分厚い積雲の帯が大地を覆い、はるか上空にはカーテンのような高層雲が漂って、細い月光を遮っている。 梟の飛翔さえ妨げる漆黒の夜色のなかで、夜空を引き裂く赤い花が一輪、咲き開いた。 高度八千メートルまで上昇できるリビトリア空軍の単発ジェット戦闘機『スーパー・オラージュ』(super e シュペルオラージュ)は、二千立方メートルの航空燃料を炸裂させたかのように粉々に吹き飛び、残骸は一つ、また一つと火を纏って落下し、下方の分厚い雲層のなかへ消えていった。 「セルヴァン! セルヴァンがやられた!」 通信機から、悲鳴が響き渡る。三人目の犠牲者は編隊長だった。もはや指揮官として有効な命令を一つも発することのできない編隊長は、破片となって大地へ散った。 「くそっ! こちらイエロー2、これより指揮を代行する!」 「敵はいったいどこだ! まったく見えない」 「もうだめだ、逃げきれない」 「うるさい、小僧は黙ってろ!」 生き残ったパイロットたちが、がなり立てる。 極度の緊張と恐怖が脳内の麻薬物質を大量に分泌させ、戦闘機を駆る者たちの感情はあらゆる方向へ暴走していった。理性を失ったパイロットたちは、軍隊の基本である意思の統一さえ、もはや果たせない。 その見苦しいさまを嘲笑うのはたやすい。だが彼らの立場に置かれれば、笑えるものではまったくない。漆黒の夜のなか、故郷から遠く離れた土……

## 第二章

長いあいだ昼夜が逆転した生活習慣は、一日や二日で抜けきるものではないらしい。クラウスが官給のベッドから這い出した顔は、疲労を絶えず滲ませ、昨夜の睡眠がどれほど劣悪だったかを物語っていた。 彼は目をこすり、窓辺で朝の陽光を浴びながら、外の景色を眺めた。 眼前に広がっているのは、リビトリア皇国北部で拡張を続ける学園都市ベルハーゲンの街並みだった。 血にまみれた歴史をくぐり抜けてきた西方世界ベルハーゲンでは、科学的真実を追究する忠誠心を持つ者であれば、だれもが平等である。この街では、人々は国家・宗教・民族のあいだの矛盾を超え、肩を並べて科学上のあらゆる問題に全力で取り組むことができる。同時に、ここの民衆には高級知識人を敬うリビトリア精神があるため、異邦人が差別されることはなく、科学者たちの突発的な奇行も寛容に受け止められる。ベルハーゲンは、科学者の楽園と呼べる数少ない場所だと言ってよい。 ただし、楽園のなかにも闇はまとわりついている。研究機関と科学者のすべてが、純粋な科学研究だけを行っているわけではない。人類の進歩と科学の発展以外の目的でやって来る組織と科学者も、残念ながら、たしかに存在する。 たとえば、ベルハーゲン郊外には親衛隊の技術試験場がある。この試験場では、殺戮と破壊の効率を高めるための実験が、毎日さまざまに行われている。 二日前、ベルハーゲンからやって来た……

## 第三章

厳冬の撤退が終わり、春が目覚めに近づくころ、ヴェストニアは方針を少し転換した。新型爆弾を第四次大戦の抑制に用いるだけでなく、サビア内戦の終結を早めることにも使おうとしているらしい。 ふたたび姿を現した巨人機と護衛戦闘機の軍団が、***アドラー軍団の応急部隊を打ち破り、サビア乱軍の一個中隊と戦略拠点を吹き飛ばし、各方面の人々がそれぞれの事情で頭を抱えているとき、小魔女は猛然と駆けていた。 ***ヴィルヘルミナ記念研究所は、怒濤のような勢いで、アンナリーザの提出した開発計画を推し進めている。計画が承認されて以来、作業は昼夜を問わず続き、技術班は言うまでもなく、アンナリーザ自身も家に帰らず研究室で寝泊まりしていた。国防軍総司令部(OKW)がアンナリーザとの協議を求めてやって来たのは、まさにその極度に多忙な状況のさなかだった。 本来なら彼女は「邪魔するな、タコ」の一言で追い返したかった。だが、国防軍総司令部の経済装備局長という格の人物が自ら訪れた以上、そうはできない。これは実質的に、事態がきわめて急を要し、国防軍が極限まで困窮しているという知らせだった。 経済装備局長***グスタフ・バイエルライン陸軍中将はイングリットとともにアンナリーザを訪ね、恭しく落ち着いた口調で彼女と語った。 問題の爆弾を積み込んだ敵の巨人機は、戦闘機はおろか、高高度用の対空ミサイルさえ届きにくい高……

## 終章

初夏の風は、とても心地よかった。 ***ベルリヒンゲン駅を出たクラウス・シュレーファーは、穏やかな陽射しを浴びながら、両側に菩提樹とブナの茂る通りをバス停まで歩き、椅子に腰を下ろした。息を吐き、襟元をゆるめ、手荷物を脇に置くと、胸元から煙草を取り出して火をつけた。 バスがクラウスを迎えに来るまで、まだ少し時間がある。彼は煙を吸いながら、途中で買った週刊誌を手に取り、なかの記事を読みはじめた。 芸能人のくだらない噂話など、下半身で世界を見ているような文章を読み進めるうち、ふと目を引く一篇が飛びこんできた。 『サビア内戦、終結へ向かう脚本』 西方領域の西端でやまなかった動乱が、ついに休止符を打とうとしている。一年前、巨人機の狩猟に成功したことを契機に始まった『血の春』と呼ばれる大攻勢は大成功を収め、叛乱軍は主導権を完全に掌握し、もともと共和政府側を支援していた各国も、いずれも断念して手を引いた。その結果、叛乱軍はサビア国内の八割を支配した。世界中から集まった急進的共和主義者の義勇兵と、狂信的共産主義勢力はなおも抵抗を続けているものの、大勢はすでに決した—— 記事を最後まで読み終えたクラウスは、灰を地面に落とし、紫煙を吐き出した。 「なにひとつ分かっちゃいない」 筆者がどのような情報源に基づいて書いたのかは知らない。だが、この記事はあまりに浅薄だった。終結? これからがクライマックスだ。今後……

## あとがき

唐突な自白だが、実は僕はゲーマーである。 近年は主にFPSとA(アクションゲーム)を遊んでいるが、本当はSTG(シューティングゲーム)も好きだ。まあ、好きではあるものの腕はひどく、だいたい二面で引っかかって先へ進めない。それにいい年だし、目もついていかなくなった。 それでも、STGの世界観と、きわめて個性的なキャラクターには深く惹かれる。斑鳩、ラジルギ、怒首領蜂、超兄貴、エスプレイド……どれも最高だ。日本の商業ゲームの大半は正義の仲間たちで、ハッピーエンドを目指していく。僕はむしろ、STGにある単純でありながら選択肢の豊かなストーリーのほうが好きだ。UNDER DEFEATの高画質HD移植も楽しみにしている。 そしてこの本を書いているとき、ちょうどエスプガルーダIIの家庭用機移植に出会った。あのキャラクターはすぐに愛用キャラになった。まあ、本当は成長したあとの姿のほうが好きなのだけれど。 とにかく、この喜びを読者のみなさんと分かち合えるよう頑張る() ……ああ、Aはやはり冷えすぎていた。結局、話は強制的に中断されたのか。 それもいい。では今から雰囲気を切り替えて、少し真面目な話をしよう。 本作の参考資料の一つ、『戦争における「人殺し」の心理学』(デイブ・グロスマン著、筑摩書房刊)の観点は、「人間は同類を虐殺する行為に強い抵抗を持つ」というものだ。 この、殺人行為に対する人間の強い抵抗感を、グロスマンは【人間の持つ高貴な資質】や[この抵抗があるからこそ、人間にはまだ希望があると信じられる]といった言葉で描いている。この抵抗力は……

More stories from the bookshelf

Browse all novels ↗