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## 第壱話『魔法と電子とニーカとか』
台湾版 軽之国度より転載 スキャン:千里朱音 「前人未到。」 「後にも来ない。」 「でも、それでいい。」 「だって、自分がいるんだから。」 「だって、自分がここにいるんだから。」 ――電王記『迷惘困惑』より ♪ ニーカ・フィアリャネートがビリの生徒として名高いのは、残念ながら事実である。 「わあー、すごい……」 のんびりした口調の少女――ニーカは、空を見上げた。 驚いて口を大きく開け、まるで無防備な姿だ。 「震撼って、こういうことなんだ。」 ニーカはそう呟く。その視線の先には、鋼鉄色の機械じみた外見の竜が、巨大な翼を羽ばたかせ、泳ぐように空を悠々と舞っていた。 高層ビル群の樹木。鋼鉄の翼竜は隙間で口を大きく開け、咆哮を放つ。 その音は空気を揺るがし、ビルのガラス窓を震わせた。 ここは都市。しかも大都市だ。 なのに、なぜか人影がない。雰囲気がひどく不気味としか言いようがなかった。 「グオオオオオオオオオオ……!」 異形の獅子の群れが、こちらへ突進してくるのが確認できる。 つまり、鈍ニーカ。それがニーカのあだ名だ。 翼竜と同じく、機械じみた外見の巨躯。 いや、 ニーカは、 ユリアンの視線は、なおも正面の獅子の群れに向けられたまま、 小声でそう言った。 「だって――あたしも、この隊の一員なんだから!」 すると大剣が震え、口を開いてこう答えた。 まず天馬を呑み込み、続いて巨大な剣士を呑……
## 第弐話『無能の証明少N』
「違っていても構わない。」 「異なるのはいいことだ。」 「異ならなくても構わない。」 「同じでも構わない。」 「どうでもいい。」 「そんなことは、まったく関係ない。」 「何をする? 何になる?」 「それは、これから知ることだ。」 ――『電王の前後』より ニーカたちの午後の公演が始まる数時間前。 「ロー枢機。本日の警備および護衛を担う百人隊所属親衛隊、隊長ギブソンの代理、第弐小隊隊長メルフォート、フィアリャネートがご挨拶に参りました。どうぞよろしくお願いいたします。」 凛とした表情に、かつての少年時代の面影をわずかに残した青年が、恭しく片膝をつき、頭を下げた。 眼前の椅子に座る初老の男は、威厳と尊厳を兼ね備え、存在するだけで周囲に緊張を漂わせる。 ローは、目を隠すほど深くかぶっていた帽子を取り、口を開いた。 「メルメルよ。」 その態度はひどく軽く、威厳と尊厳を兼ね備えた感じの口調ではなかった。 「うっ……」 青年メルは喉を詰まらせ、危うく空気に噎せかけた。 「枢、枢機……その呼び方はあまりよろしくありません。それに、部下の前ですし。」 「そうは言うが、誰もいないだろう。俺とメルメルだけだろ。」 それでも、ローはやはり安心できるのだった。 少なくとも旧知の前では、こうして『本来の自分』を出したい。 ただのニーカ・フィアリャネートの兄、メル・フィアリャネート。 メルはゆっくりと顔を上げた。 「メルは本当……
## 第参話『電動無感少N関係』
「問題は、できるかできないかではない。 やるかやらないかだ。 もっとも、やらないという選択肢は、そもそもないけどな。 つまり、やるしかない。 そうだろう? できるからやるんじゃない。 やるから、できるんだ。」 ――『電王の後悔』より ♪ あの雨はかなり激しかったが、どうも驟雨だったらしい。 その後は天気予報どおり、晴れのいい天気になった。 だが驟雨のせいで、予定されていた多くのことが中止になった。 とりあえず、 「あの突然の豪雨のせいだ。」 そういうことにして、生徒たちはそれぞれ遠征最後の夜を過ごした。 平静を保とうと努めていたユリアンたち「赫服」の精鋭も、寮に戻ったあとでは、表情に疲労の色を隠せずにいた。 「いやあ~、みんな今日は本当によく頑張ったね!」 代理校長の労いの言葉とともに、寮では少し豪華な夕食が用意されたが、誰もあまり食欲がわかなかった。 原因不明の召喚獣の暴走と、豪雨による公演の中断。 当事者であるディーゼルホルスト班とロイリ班のメンバー、とりわけ隊長を任されたユリアンとクリス・ロイリは、すでに起きたことを受け入れるより、自分を納得させる時間が必要だった。 最愛の妹に会えると思っていたのに、やむを得ない事情で会えず引き返した兄のメルは、最後まで、 事情はこうだ。ニーカももともと、久しぶりに兄に会えることを少し期待していたので、その期待が外れたことで気分もひどく落ち込んでいた。 ユリアンとロイリ班……
## 第肆話『電子魔法使いとニーカ』
「――答えを知りたがらないほうがいい。」 「――だって、それはいつの間にか、そこにある。」 「――そこにあるのは、誤りだけだ。」 「――誤りの中でしか、正しい答えは探せない。」 「――答えは、あとから自然と浮かび上がる。」 「――いや、たどり着いた目的地こそが、答えそのものだ。」 「――答えはない。」 「――応答もない。」 「――それなら、探しに行け。」 「――その両手で、その両足で、その声で、その五臓六腑で、その運命で。」 「――ただし、俺なら。」 「――探しになんか行かない。」 「――だって、その必要がない。」 「――答えのほうが、自分から寄ってくる。」 「――俺を求めるために。」 「――俺に応えてほしいから。」 「――俺が答えだからだ。」 「――なぜか?」 「――それは、俺が『電王』だからだ。」 ――電王記『幽微者』より ♪ あの二人に、もっと多くの思いを伝えられるだろうか。そして、二人の思いを聞けるだろうか。 ニーカはぼんやりと、車窓を流れる景色を眺めていた。 日常に戻った。 負傷した者は多く、血は川となって流れた。 「ニーカ・フィアリャネートは、電子魔法が使えないのに、兄の七光りで入学した特別生徒だ。」 リード・ダクシュレシタ。 それに、十年前に起きた事件の影響も含め、魔法学校は堅固な安全システムに守られている。 遺憾は、なお心に残っていた。 それらはほとんど、反電王・反魔法議会の勢力に関わっている。 列車は、まるで何事もなかっ……
## 第伍話『魔法使いの放課後』
「いつか、消える。」 ――『電子計算機の神』より ♪ 演習中の事故は、すべて若い女教師の仕業だった。 外側からの侵入、侵略、攻撃に対してはどれほど堅固な魔法学校のシステムでも、内側から手を下せば、多少は緩くなるのかもしれない。 魔法学校代理校長マスキス・ヴァレンタインは、今回の事件が魔法学校内部の者によるものかもしれないとすぐに察したが、外側――つまり魔法界のテロネットワークなど、反勢力の組織の一派と関わっている可能性もある。その点を調べるため、彼はひとまず動かず、「犯人」が自由に動くのを、状況が危機に陥るまで放っておくことにした。 しかし、それを確認する前に、ニーカ・フィアリャネート、ユリアン・ディーゼルホルスト、リード・ダクシュレシタの三人が、一歩先に第三実験棟(島)へ踏み込んでしまった。 三人は心を合わせて困難に立ち向かった。 教師たちにとって、その点は喜ぶべきことだ。遠征の成果が現れた、ということなのだろう。 本当は、褒めてやりたかった。 「前からこの三人の組み合わせは面白いと思っていたが……こんな化学反応を起こすとは……青春期は衝動的なものなのか?」 マスキス代理校長は、ニーカたちの活躍を知り、ため息をついた。 ユリアンが第三実験棟の制御権を握り、魔法学校の本校舎に連絡した。緊急召集を受けて駆けつけてきたマスキスたち教職員は、三人を厳しく叱責した。 「だから、先生たちに任せておけばいいと言っただろう……!」……
## 『あとがき』
♪ 読者の皆さま、はじめまして。長谷川啓介です。 先日、一本の映画を観ました。コメディ調で、テンポはのんびりしていて、思わずにんまりし、そして涙するような作品でした。劇中にゾンビは出てきますが、ゾンビ映画ではなく、ゾンビ映画を撮る人々を中心に描いたものです。長谷川はゾンビが怖い。というより、ホラー映画や血肉が飛び散るような怖いものは、全部見られません。僕の作風からすれば、その点は一目瞭然だろうと思いますが……そんな臆病者でも、この映画はまったく問題ありませんでした。ゾンビの場面も、作品の雰囲気と登場人物のおかげで、「あはは」と笑いながら観ることができました。一本観終えて、「ああ、この映画、面白いなあ。」と、心の中でこれ以上ないほど感動しました。本来なら、それで終わりのはずです。ところが、その後の三日間、僕は毎晩――ゾンビに追われる夢を見ました。全然だめじゃないですか。全然問題なくなんかないじゃないですか。実際、影響はかなり大きかったんです。 それなのに、実際には一日目、二日目までは、ゾンビの夢を見たことをぼんやり覚えてはいても、なぜ「あんな夢を見るのか?」とは考えず、「いやあ~、嫌な夢を見たなあ~」と思うだけでした。そして三日目になって、「あ! もしかして、あの映画のせい? ゾンビ映画には全然見えなかったのに!」と、ようやく三日連続でゾンビの夢を見た理由に思い至りました。あの程度でゾンビに追われる夢を見るなんて、まったく考えていませんでした。それに気づいたとき、自分でも、僕は本当にだめだなと……