解読不能の暗号少女

NOVEL · SECTION 01 OF 01 · 日本語

解読不能の暗号少女 — Section 1

誰にも読み解けない暗号に包まれた少女。彼女が残す記号はすべて解釈を拒み、秘密に近づくほど、暗号はすり抜けていく。

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THE READING ROOM

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Contents · 1 sectionsSection 1

01 / 01

Section 1

## 挿絵

## 登場人物

掃図:陽子ようこ 西村 拓実 高校二年生。東京から来た転校生。記憶力が人より少しだけ良いことだけが取り柄の少年。「泣くときは本当に泣いてしまう男」「男子生徒Z」「陰気で光を避けるモヤシ男爵」など、いくつもの個人的なあだ名を持っている。 沢渡 遥 高校二年生。西村のクラスの委員長。暗号が大好きな暗号少女。 野々崎 岬 高校一年生。推理小説が好きな小柄な少女。小動物のような外見に騙されて手を出すと、痛い目に遭う。 西村 知子 中学二年生。拓実の妹。愛称はちー。明るく奔放で、いかにも今どきの女子中学生。遊び道具にするのが好きなのは、兄。 中瀬 和希 高校二年生。性格は率直で、すぐに人と喧嘩になる陸上部の少女。かつて拓実にとってリーダー格だった存在。好きな四字熟語は焼肉定食。

## 第一問 最初にして最後のQの書

統計的に言えば、人が相手に抱く印象の実に九割近くは、最初に会ったときに決まってしまうのだという。 つまり、人間関係の成否の大半は、初対面のその一瞬で形づくられると言っても過言ではない。 例を挙げてみよう。ある高校のあるクラスに転校してきた男子生徒がいる。 転校初日、胸を高鳴らせながら初めて学校へ行き、これから始まる新しい生活に本人の胸はときめいていて、担任が本人に「自己紹介をしてください」と言い、本人がクラスの皆と真正面から向かい合った、その時点で。 このとき本人が、慌てず、堂々とした態度で見事な自己紹介をすれば、彼の新しい学校生活は、すでにほぼ成功したと言ってよい。あとは彼を見上げる誰もが「落ち着いたやつだな」「頼れそうだ」「友達になれそうだ」といった好意的な印象を抱き、そして黙って向かい側から友達志願者がやって来る、という具合だろう。 では逆に、この男子生徒が「初対面を見事にこなせなかった」としたら、どうなるのだろうか。 ……ええと、どうなると思う? たぶん、その光景を実際に見せたほうが、答えは早く出るだろう。 というわけで、では、どん。 「「がやがや……」」(僕の机を中心に、ちょうど半径二十センチの地帯に、低い壁のような人だかりができている) 「「こそこそ……」」(驚いた顔のクラスメイト……

## 第二問 孤高のHUIWENさま

「では、ホームルームはここまで。部活のない人は、帰るとき気をつけて」 刺激的な転校初日以来、もう一週間が経った。担任の先生の言葉を合図に、今日一日の授業が終わった。 最初はどんなことになるのかと心配していた学校生活も、過ぎてしまえばあっという間だ。新しい校舎にも慣れ、前の学校とは進度の違う教科も、なんとか追いついた。 「ファスナー村、またね」「先に帰るね、西村」「ファスナー村、また明日」(注:西村のあだな読みはファスムラで、ファスナーの読みはファスナー。前章で西村がやらかしたことをからかう呼び方。) それに、見知らぬ相手には冷たい東京の学校とは違い、僕が育った真昼之崎の皆は、あのあと何事もなかったかのように僕を受け入れてくれた。あんなことがあったあとでも、温かさを感じさせてくれた。 これまでに味わった孤独な日々は、今思い返すと夢のようだ。傍から見れば、クラスメイトの僕への呼び方の半分以下がファスナー村で固定されている、といった些末な問題はまだ残っているが、むしろ僕のほうから、喜んで名前をファスナー村に改めたくなりそうだ。 そんなこんなの紆余曲折を経て、最初はどんなことになるのかと思っていた僕の日常は、意外なほど順調に進んでいる。 教室は放課後の快活な喧噪に満ちていて、僕も少し身を起こし、両肩に溜まった疲れを解放した。 さて、帰ろう。今日は四時半にまだ……

## 第三問 逆立ちして歩く少N心

デート。 英語で言えばdate。 原義は日付。 英語圏で暮らす人なら、この単語を耳にする機会は並外れて多いはずで、僕がイギリスかアメリカの出身だったなら、今ごろ心臓の鼓動ももう少し落ち着いているだろう。どうして僕の両親は純血の日本人なのか。今日の僕の頭の中は、そのことばかりだ。 誰が予想しただろう。デートという単語が、こんな意味で僕に使われる機会が来るなんて。少なくとも僕は、予想していなかった。 いやでも、しかし、しかしだ。まずは落ち着け、僕。深呼吸だ。一回、二回、三回。吸って——吸って——吐いて。これはラマーズ呼吸法だ。(百科:ラマーズ(出産)呼吸法は、心理的予防式の分娩準備法とも呼ばれる。この分娩法は、妊娠七か月から分娩まで、神経筋のコントロール、産前体操、呼吸テクニックの訓練を学ぶ過程を通じて、产妇が分娩時に注意を自分の呼吸のコントロールへ集中させ、痛みをそらし、筋肉を適度にリラックスさせ、陣痛と分娩の過程で自信を持って平静を保ち、分娩を早め、赤ん坊を無事に生むことを目的とする。) ……ふぅ。 僕はまったく、デートという単語に心をかき乱されすぎている。あの単語は、僕のような純情な紳士にとっては、確かに刺激が少し強い桃色の言葉だ。しかし僕は、これっぽっちのものに目を曇らされて、とても大切なことを忘れているのではないか。 相手は沢渡さんなのだ。 あの人はまさに、天使の皮をかぶった宇宙人だ。だか……

## 第四問 三枝竹山回想録

小学六年生の夏、今から五年前。僕が東京へ引っ越すことが決まり、真昼之崎を離れるまであと数日、そのうちの一日のことだ。 荷物はほぼ梱包を終え、主な友達への説明も済ませ、「まだやっていない、やるべきことはないか」と考えているとき、「僕が真昼之崎に存在した証を残そう」という感傷的な結論に至り、そのことを個人的なタイムカプセルと名付けて、当時よく遊びに行っていた近くの山へ向かった。 僕は当時宝物にしていたPVCの仮面ライダー人形(あのころ一番好きだった特撮番組で、改造手術を受けた人造人間がバイクの免許を取るために奮闘しつつ、ついでに邪悪な組織と戦う物語。平均視聴率は二パーセント)をしっかりと握り、次はどこに埋めようかと考えながら山の中を歩きまわっていると、普段見かけない女の子に出会った。 麦わら帽子を眉のあたりまで深くかぶり、白いワンピースを着た可愛い子だった。その子は誰かと一緒に遊んでいるわけではなく、ひとりぼっちで地面に座り、枝で何かを書いているようだった。 普段なら僕は「不思議な子だな」と思うだけで終わっただろう。しかしその日の僕は憂鬱な少年心が大爆発していて、この邂逅を勝手に運命めいたものだと思い込んだ。 「こんなところで何してるの?」 意を決して、彼女に話しかけた。少女はこちらを見るなり、すぐに体をびくりとさせ、その場で三歩後ろへ下がった。明らかに警戒して……

## あとがき

僕は東京の片隅で、ひたすらハンバーガーを作りながら、ひたすら小説を書いていて、去年の秋にこの作品を応募した。あのときと何が変わったかと言えば、たぶん髪が減って体重が増えた、といったところだろう。 とにかく、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。僕の名前は新保静波です。 あれから一年が経った今も、相変わらずハンバーガーを作って暮らしていますが、こういうかたちでハンバーガー以外の商品を人の手に届けられるのは、いろいろな意味でとても感慨深いものです。 本の値段が、普段お客さんの注文するセットとほぼ同じなので、そう思うと急に緊張してきます。 もし誰かが、昼食一食分に見合う満足を得られたなら、皆さんに感謝します。これからも頑張ります。 もし誰かが、この程度ならハンバーガーを買ったほうがマシだったと後悔するなら、皆さんに本当に申し訳ありません。もっと、もっと頑張ります……。……でも美味しいんですよ、Mバーガー(YJ:らんらんろー?)。ここで長く働いているけれど、今でも一番好きです。 次は、このあとがきを書いていることについて。つい最近、新商品が出ました。百分の百国産肉のハンバーガーに厚いベーコンを挟んだ、とても豪快で見事な一品で、とても美味しいですよ! 近くの店の前を通ることがあれば、ぜひ食べてみてください。店員一同、心よりお待ちしています。 以前、好きな人がいたんです。当時バイトしていた店の後輩で、礼儀正しくて、頭の回転が速くて、人当たりの優しい女の子でした。彼女の名前は仮……

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