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# 旅よ、世界が滅びる終焉まで
## 挿絵
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ネット翻訳版 転載元 澄空学院二次元ライトノベル同好会 bbs.sumisora.net/thread.php?fid=60 翻訳:ameaya;kawai_lucy;WF;leaf;熊吉;darkxh;三三;小雅;某T;栗子 校正:ameaya;淳平;幻の傷;艾德;小橙子;栗子;聆風;小米;梦境 画像加工:魔法猫;小R 推敲:amemiya;琉璃 ———————————————— あらすじ 少年と少女の旅が始まった。一冊の日記を携えて、世界の終焉まで。 世界は、すでにゆっくりと滅びの淵へと歩みを進めている。 「記憶喪失」が蔓延し、人類は次第に世界から消えていく。自分の名前を失い、世界の色彩を失い、さらには自分という存在まで、少しずつ、完全に失われていく…… そんな世界のなかで、一台のバイクが、なおも疾走していた。乗客は少年と少女。ほかの人々と同じく、彼らもまた、いわゆる「記憶喪失」を患っていた。だからこそ学校と家庭を離れ、長い旅路に踏み出した。 目的地は、世界の終焉。 目的もなく、意味もない前進。それでも旅を放棄しようと思ったことは一度もない。知らず知らずのうちに自分を失い、滅びの淵に立たされても、二人は一度も後悔しなかった。 記録しながら、記憶を失っていく世界で。少年と少女の旅の記憶を、旅の物語を記した、一冊の本。
                 
## 序
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世界は、すでにゆっくりと滅びの淵へと歩みを進めている。 「記憶喪失」が蔓延し、人類は次第に世界から消えていく。自分の名前を、世界の色彩を、さらには自分という存在までも、少しずつ、完全に失われていく…… そんな世界のなかで、一台のバイクが、なおも疾走していた。乗客は少年と少女。ほかの人々と同じく、彼らもまた、いわゆる「記憶喪失」を患っていた。それゆえ学校と家庭を離れ、長い旅路に踏み出した。 目的地は、世界の終焉。 目的もなく、意味もない前進。それでも旅を放棄しようと思ったことは一度もない。知らず知らずのうちに自分を失い、滅びの淵に立たされても、二人は一度も後悔しなかった。 記録しながら、記憶を失っていく世界で。少年と少女の旅の記憶を、旅の物語を記した、一冊の本。 すべてを捨てて、旅に出ることができるだろうか? そう問われて、すぐに答えられる人は、そう多くないだろう。 けれど、私は答えた。 あのときの光景は、写真のように、鮮明に脳裏へ焼きついている。 すべてを捨てて、旅に出ることができるだろうか? その問いに対する、私の答えは――はい。
## 第一章 夢
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「……どう? 直せる?」 尋ねているそのとき、少年は尻を突き出し、手にレンチを握り、まる一週間便秘しているかのように、必死でねじを回していた。 「四日前から、こいつをいじり回してるんだ。もう少し直せば、この調子なら、次の街までは行けるんじゃないか?」 「勘弁してよ。次の街まで、まだ数十キロもあるのよ」 少女は笑いをこらえきれず、そばの長椅子に腰を下ろした。ただ、その長椅子は長いあいだ日にさらされ、ぱりぱりと毛羽立っていた。裸の脚で座ろうものなら、きっと擦りむける。とはいえ今は、身体の疲れがすべてに勝っているようだった。少女はスーツのジャケットに似た制服を着ていたが、暑さのせいか、すでに上着を脱ぎ、しきりに手で風を送っている。 「少年って、本当に物を直す才能がないのね? このバイク、とっくに壊れてるのに、無理して百四十キロ以上も走らせて……なんと言えばいいのか。そんなことしたって、わざわざ褒めてくれる人なんていないわよ」 「……うるさいな。今は進みながら直すしかない。一気に大修理なんて、今じゃとうてい無理だ」 少女の口から少年と呼ばれる少年は、手のレンチでねじを一段と締めつけた。 彼とその少女は同じ学校の生徒で、彼も同じ型の男子用制服を着ていた。ただ彼もまた上着を脱ぎ、ネクタイをほどき、襟元はすっかり……(コンテンツの読み込みに失敗しました!更新するか、ブラウザを変更してください)
## 幕間
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「……ねえ、少年」 しばらく走ったあと、少女がふいに声をかけた。 「なに?」 「……さっき、理事長が言ってた。来年の五月には、いちごが収穫できるって」 「うん」 「理事長、少し残しておけるかしら?」 「……わからない。『置いたまま腐らせる』よりは、早めに収穫したほうがいい」 「……」 二人のあいだは、ふたたび沈黙に戻った。少女は後ろに座り、少年の腰をきつく抱きしめていた。 がんばれ、秘書さん。がんばれ。 少女の声は、バイクの排気音に完全にかき消され、最後の言葉が何だったのか、誰にもわからない。そのすべてが、夏の気配とともに、背後のアスファルトへと染みこんでいった。 * バイクのエンジンは力強く回り続け、やがて理事長の雑貨店は、地平線の向こうへ消えた。 バイクは軽やかに進む。道の両側の景色は、昨日とさして変わらない。ただ一つ違うのは、速度を上げ続けるバイクがもたらす、わずかな涼風だった。頭上の太陽は相変わらず人を殺しかねない陽光を放っている。それでも、向かい風の涼しさは、いくらか気が楽になる。 「そうだ、少年」 突然、少女の声が沈んだ。 「うん、どうした?」 「どうしてあなたの身体から、石鹸のいい香りがするの?」 さっと、少年の頬から血の気が引いた。 「おかしいわ……『わたし』、お風呂に入ってないはずなのに、……(コンテンツの読み込みに失敗しました!更新するか、ブラウザを変更してください)
## 第二章 翼
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少年は顔を上げ、濁った空を見上げた。 さっきまで爽やかに晴れていた空が、いつのまにか背後から押し寄せる黒雲に追いつかれ、ほとんど一瞬のうちに曇ってしまった。ごろごろと雷鳴が響き、空に浮かんでいた太陽は、すでに影も形もない。 それに対して、周囲を流れていく景色は、相変わらず変わり映えのない草原だった。 ときおり、そう遠くない場所に、冬の吹雪で壊されたような農家の建物が見える。だが、あの損壊した建物で雨宿りするなど、どうにも見込みがなさそうだった。 「……ああ……もうすぐ雨が降りそうだ。どこか雨をよけられる場所があればいいのに……」 「大丈夫、問題ないわよ~。だってわたしは晴れ女なんだから~~」 「それは悲劇だな。俺は雨男だから」 「あらあら~」 二人はへらへらと笑い、少女は何気なく振り返って、一日じゅう背後にあった空を見た。じわじわと追いついてくる黒雲は、かなりの水分を蓄えているように見えた。 実際、濡れること自体はどうでもいい。肝心なのは、どこかに人家があり、自分を待っている乾いたタオルがあり、それから身体を温められる暖炉があることだ。 二人で自分たちの身体を温めようとすれば、燃料のほかに、自分で火を起こし、自分で衣服を乾かさなければならない。そうして風邪を引いたら、あまりにまずい。その結末は深刻だが、さらに深刻なことがその先にある。このまま立ち止まって進まなければ、腹を空かせることになるだろう。 「このままじゃ、二人とも風邪を引く。そうなったら……(コンテンツの読み込みに失敗しました!更新するか、ブラウザを変更してください)
## 幕間
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太陽は次第に傾き、地平線の向こうへ隠れた。それでも少年はスーパーバイクを走らせ続けていた。途中で道を間違え、予定より遠い回り道をした。だが、その間違いを犯した理由は、やはり精神的な問題なのだろう。 目を閉じれば、すぐにBOSSの顔が浮かぶ。しかし喪失症のせいで、顔かたちは次第に消えていき、最後にはBOSSの顔も、きわめてあいまいな様子しか思い出せない。体格も、声も、口癖も、彼が確かに存在したことを証明する要素は、湯に入れた氷のように形を失い、そのほか雑多な記憶と、浅く溶け合っていく。 認知崩壊の影響を受けた記憶を思い出そうとするたびに、既視感を見ているような感覚が襲ってくる。思い出そうと続けようとすれば道標を失い、思考はねじれ、絡み合い、吐き気がして、あきらめることになる。 「このあたりで休むか?」 そんな代わり映えのない発言は、ひどく気力を削ぐ。 さっきから少年は、自分の腰に回された少女の手を、ずっと撫でていた。そばにいた一人が消えただけなのに、そばで三か月をともに過ごした少女の存在が、不安でならなくなる。 もし彼女まで消えてしまったら……そう思うだけで、背中に冷たいものが走り、少女の手を撫で続けるしかなかった。 理屈ではわかっている。まだ初期段階の少女が、そう簡単に消えることはない。しかし、今のようにバイクに乗っていると、……(コンテンツの読み込みに失敗しました!更新するか、ブラウザを変更してください)
## 第三章 旅
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「本当に最悪……」 助手席に座る少女は、フロントガラス越しに、汚れた綿をかぶせたような空を眺め、ゆっくりと言った。 「うん。どうやら君みたいな晴れ女でも、運が尽きるときは尽きるんだな」 少年は苦笑してドアを開け、びしょ濡れの靴を力いっぱい絞った。 車の外の雨は、止む気配がまったくない。少年が脱いだ衣服も、乾きそうには見えなかった。 BOSSの倉庫を出てから、すでに数日が経っていた。二人はもともとBOSSが指示した『隣町』を目標に、人けのない道を走っていた。途中で道を間違え、少し手間取ったものの、予定より一日遅れただけだ。 しかし、その日の夜は、ちょうど雨に出くわした。 突然、土砂降りが始まり、少年たちはあっという間にずぶ濡れになった。 もちろん、少年たちも馬鹿ではない。雨具はきちんと携行し、簡易テント代わりのビニールシートも持っていた。この三か月の旅で、雨に打たれない道理はない。 しかし、それらの道具は、今回は役に立たなかった。 ビニール傘を差したままではバイクに乗れず、コンビニで売っているレインコートも、これほどの雨は防げない。簡易テントを張ったところで、この強風ではとうてい持ちこたえない。 仕方なく二人はレインコートを羽織り、あまねく神々に祈りながらスーパーバイクを飛ばした。二人にとって、風と雨をしのげる場所を探す以外に、道はなかった。 わからないのは、……(コンテンツの読み込みに失敗しました!更新するか、ブラウザを変更してください)
## 幕間
> https://www.bilinovel.com/novel/823/36295.html
電動バイクのエンジン音が聞こえなくなったあと、 「……本当に騒がしい連中だな」 医師は小さくつぶやいた。 「そうね。うらやましいわ」 医師は驚いて姫を見た。姫はもともと、どれほど他人をうらやんでも、口には出さない子だった。それが他人への配慮なのか、自分が憐れに見えないためなのかはわからない。少なくともこの数か月、医師は姫が「うらやましい」などと言うのを聞いたことがなかった。 彼女が自分の変化に気づいているかどうかはわからない。だが、その表情は明らかに以前と違っていた。昨夜、彼女と少年のあいだでいったい何があったのか、医師には想像もつかない。 そのとき、姫を見下ろしていた医師は、足元に落ちた小さな紙片に気づいた。 字の書かれた細長い紙片で、厚紙で作った栞に近い。一端に穴が開き、その穴にはピンクのリボンで結んだ結び目がついている。 この栞は手作りらしく、作るときに慌てたのか、少し歪んでいる。 「姫、これは?」 「?」 医師の手から紙片を受け取り、姫はその文字を読んだ。少年が書いたもののようで、筆跡は昨夜見た日記の彼の字によく似ている。簡潔で明快な文字だった。 「……『日記二号の所有者へ。これは一号の二名の所有者より授ける秘伝の奥義である。この日記を書くとき、必ず守らねばならないことが一つある』……」 文章はそこで終わっていない。続きは裏面にある。さて、奥義とはいったい何なのか。傍らの医師は、興味深げに盗み見ていた。 姫……(コンテンツの読み込みに失敗しました!更新するか、ブラウザを変更してください)
## 終章
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燃えるような烈日の下、まっすぐな道を一台のバイクが疾走していた。 車体は銀色で、付属のシートは改造され、前後二つのキャリアが追加されている。 電動バイクに乗っているのは、一人の男と一人の女。 ゴーグルつきの銀色のヘルメットをかぶった少年は、十六歳くらい。スポーツジャケットを着ている。 ゴーグルはなく、赤いヘルメットをかぶった少女も十六歳。こちらもスポーツカジュアルを着ている。 進行方向は北から南へ変わったものの、二人は相変わらず、ほとんど会話もなくバイクを走らせていた。 さっきまでぷんぷん怒っていた少女は、今はおとなしく少年の背中にもたれかかっている。 腹に回された手と、背中に押しつけられるほかほかの体温は、少し鬱陶しくもあり、同時に愛おしくもある。 「……ねえ、少年」 「うん、どうした、少女」 鳴り止まないエンジン音と風の音が一つに溶け、少し騒がしいノイズから、BGMのような背景音へと変わっていく。 「ねえ、覚えてる? 一緒に旅に出ようって言ったときのことを」 「もちろん」 懐かしい話題に触れ、思わず笑みがこぼれた。 本来、忘れてはならないことだ。喪失症で家族をすべて失い、毎日ぼんやりと通う高校で日々をやり過ごしていた少年。未来に期待は抱かず、かといって完全に絶望して自暴自棄になるのでもなく、ゆっくり回る時針を見つめながら、意味のない日々を送っていた。 ある日、突然クラスメートが話しかけてきた。名前はおろか、顔さえ見たことがない、まったくの見ず知らずの女の子が、開口一番、一緒に踏み出そうと誘ってきた……(コンテンツの読み込みに失敗しました!更新するか、ブラウザを変更してください)
## あとがき
> https://www.bilinovel.com/novel/823/36297.html
この作品を書き始めたのは、電撃大賞の締め切りの一か月前だった。 それまで大賞に投稿するつもりだった、一年がかりの作品が行き詰まり、そのときは大賞への挑戦をほとんどあきらめていた。 周囲の友人がよく、「ところで大賞の締め切り、あと一か月だっけ」「今から書き始めて間に合うなら、すごいよね」と話題にし、それが今回の創作のきっかけになった。 どう転んでも時間はあまり残っておらず、物語は一つも決まらず、キャラクターの名前も一つもない。単純に、主人公とヒロインを一人ずつ登場させる序章を書き、ふとひらめいて「登場人物に名前のない小説」にした。ある意味、締め切りに追われる状態で産み落とされた作品だろう。 『もし、明日死ぬとしたら、あなたは何をしますか?』 そういう問いが、たまに耳に入ってくる。では、 『もし、自分がいないあとに、世界に自分の痕跡が何一つ残らなかったら、どうする?』 それから、どうするのか。 この作品の原点は、おおよそそういうところにある。 少年と少女は、答えを探すために旅に出る。旅を通じて答えを探すのではなく、旅のなかの経験を通じて答えを手探りする。二人が選んだのは、そういう方法だと思う。 この作品を投稿した日のことは、今でも鮮明に覚えている。あのときから大賞を取るつもりはなく、百分の一の見込みすらなかった(妄想を除いて)。正直に言えば、二次審査に残れば話題になるだろう、と、そう思っていた記憶がある。 もともと電撃大賞のようなものに参加するつもりはなく……(コンテンツの読み込みに失敗しました!更新するか、ブラウザを変更してください)