死者の学園祭

NOVEL · 日本語

死者の学園祭

# 死者の学園祭 ## 挿絵 > https://www.bilinovel.com/novel/939/119381.html ![](https://img3.readpai.com/0/939/119381/65159.jpg) ![](https://img3.readpai.com/0/939/119381/65160.jpg) ![](https://img3.readpai.com/0/939/119381/65161.j……

Start reading · 1 sections ↓

THE READING ROOM

Text in 日本語

Contents · 1 sectionsSection 1

01 / 01

Section 1

## 挿絵

## 序幕

+図版出典/校正:多多 +デザイン:女装少年 「真知子、ねえ、真知子——ここよ、ここ!」 声のするほうへ顔を上げた真知子は、目に映った光景が信じられず、その場に凍りついた。鉄筋コンクリートの校舎、四階。クラスメイトの山崎由子が、そこのバルコニーから真知子に向かって手を振っている。それなのに、由子はバルコニーの手すりに立っていた。 手すりの幅はわずか数センチ。山崎由子は、散歩でもしているかのように、悠然とその上を歩いている。 「何してるの!」 真知子はようやく我に返り、声を張り上げた。 「歩いてるのよ。」 上から、のんびりした声が降ってくる。 「危ないってば! 早く降りて!」 バルコニーの下はコンクリートの道だ。誰かを呼ばなくては、と真知子は思った。 「大丈夫だって……」 「だめ! 落ちたらどうするの! 早く降りて! お願い、由子、降りて。」 放課後で、近くに助けを呼べる人はいない…… 「ふざけるのはやめて! 降りて!」 「わかったわ。」 由子が手を振ると、真知子はようやく息をついた。次の瞬間、由子は手すりから下り、その外側へと身を躍らせた。 高いところから人が落ちるところを、真知子は見たことがなかった。映画では、人はゆっくり落ちていき、悲鳴がいつまでも尾を引く。現実は、そうではなかった。 何の前触れもなく、山崎由……

## 第一部 武蔵野学園

1 Tホテル 「お父さま、まだいらっしゃらないみたいね。」 「わたしたち、早すぎたのよ。とりあえず座りましょう、お母さん。」 真知子と母の結城恵子は、そばのソファに腰を下ろした。 「あらまあ、このソファ、どういうこと。」 真知子は笑って言った。「一度座ったら、なかなか立てないの。」 ここは東京・日比谷のTホテル。重たい回転ドアを押し開けると、広々としたロビーが広がる。制服に金モールをあしらったボーイがきびきびと行き交い、出入りする客の半分以上は外国人だ。 真知子は、そばを通り過ぎる外国人たちの会話の切れ端に耳を澄ませた。英語とフランス語以外は、何語なのか聞き分けられない。わからないまま、自分は外交官になって、国際会議のホールにいるのだ、という気分になっていた。 「本当に落ち着かないわ。」 ソファに座った母の恵子は、しきりに腰をずらす。太っているせいで、ずしりと沈み込んでしまうと、立ち上がるのがひと苦労なのだ。それに恵子は、こういう場所が苦手だった。東京の下町で育った彼女には、堅苦しい格式が肌に合わない。 「ねえ真知子、そのワンピース、ネックレスを合わせたほうがきれいよ。」 「そう?」 真知子は、淡いブルーのワンピースに目を落とした。 「わたしの言うとおりにしなさい。お父さまが来るまでのあいだに、見てきたら? 行ってらっしゃい。わたしはここで待っているから。」 「お母さん、わたしのためにそんなに気を回さなくていいの。」 「そうかしら?」 「その気持ちは、わたし……

## 第二部 夏の冒険

1 倉林先生の秘密 「ながら族」(注:同時に二つ以上のことをする人。音楽を聴きながら読書をする、といった類)という言葉は、昔ははやったが、今では誰も使わない。ながら族がいなくなったわけではない。誰もがながら族になったのだ。 真知子も例外ではない。ヘッドホンで音楽を聴きながら英文の練習問題を解き、口にはケーキを詰め込み、頭では明日の予定を考えている。彼女にとって、それは造作もないことだった。 ところがこの夏休みは、そう思いどおりにはいかない。夏休みの宿題を書き、殺人事件の真相を調べ、恋をする。この三つを同時に進めるのは、どれほど有能な真知子にも無理だった。愛を打ち明けながら、右手で辞書をめくり、左手に拳銃を持ち、右足でダンスのステップを踏み、左足で殺人犯を追う——そんなことができたら、彼女は妖怪である。 やはり一つずつ片づけるしかない。それなら、手早く終わるものから始めるのが効率的だ。さっきの三つうち、事件の捜査と恋愛は他人が絡むから、自分の予定どおりには進みにくい。残るのは夏休みの宿題だけ。これまでいつも、休みが終わる三日前に一気に書き上げていた。今回は腹をくくって、夏休みの最初の三日で終わらせる——はずだったのに、逆だった。 なぜだろう。書く気は確かにあった。それなのに、英語を日本語に訳す宿題の……

## 第三部 死者の学園祭

1 新学期の始まり 二学期は九月八日から始まった。学校に戻った生徒たちは話し足りず、話題の中心はもちろん真知子だった。あのときの様子はどうだったの、あれは全部本当なの、とクラスメイトは問い続け、真知子はほとんど対応しきれなかった。 そのうえ、C組の担任は音楽の三沢先生に替わった。倉林先生と幸枝が突然姿を消した件を、学校は事実のまま外に出したくない。だから三沢先生には、倉林先生が急用で田舎の実家に戻らねばならず、しばらく学校には戻れない、とだけ生徒に伝えさせた。その説明を聞いた生徒たちはざわつき、不満の声を上げた。三沢先生は続けて言った。 「長池幸枝さんは倉林先生の奥さまですので、一緒に帰られました。いまはとりあえず休学の手続きが済んでいます。」 言い終わると、教室に上がった驚きの声は、チンパンジーが一頭、授業に来たときの衝撃に決して劣らなかった。 倉林先生に片想いしていた生徒たちは、ほとんど泣き出しそうだった。 「ひどい。本当にひどい。」 あちこちでため息が漏れる。真知子も、初めて聞いたふりをして驚いた顔をつくった。この場で、自分はとっくに知っていたと言えば、確実に袋叩きにされる。 さらに残酷なことに、試験はすぐに始まった。五日の試験期間が終わると、クラスも興奮のなかで、少しずつ落ち着きを取り戻していった。 いまは九月の半ば。みんなは、別のことに熱を入れ始めていた——……

✳

You've reached the end of the available text.

Find another story →

More stories from the bookshelf

Browse all novels ↗
下脚野菜村の敗部復活大作戦CHAPTERS AVAILABLE

NOVEL · 日本語

下脚野菜村の敗部復活大作戦

マクドナルドもない。スターバックスもない。セブン-イレブンさえない。覚悟はとっくにできていたはずなのに、辺りに広がるど田舎の光景を目にした瞬間、八月だというのに背中を冷たい寒流が駆け抜けていくような侘しさがこみあげた。フロントガラスの向こうに見えるのは山々と林、そしてかつて田畑だったものが、いまは完全に打ち捨てられた荒れ地だけ。多岐川優は都心から道なりに……

Open the book ↗
妖怪連絡簿CHAPTERS AVAILABLE

NOVEL · 简体中文

妖怪連絡簿

# 妖怪連絡簿 ## 挿絵 > https://www.bilinovel.com/novel/944/119934.html ![](https://img3.readpai.com/0/944/119934/69285.jpg) ![](https://img3.readpai.com/0/944/119934/69286.jpg) ![](https://img3.readpai.com/0/944/119934/69287.jp

Open the book ↗
攻撃魔法が使えない魔法使いCHAPTERS AVAILABLE

NOVEL · 日本語

攻撃魔法が使えない魔法使い

テレビとパソコンの差がほとんど消え、多連網コンピュータ(多連想ネットワーク・コンピュータの略)が、当然のように次の……

Open the book ↗
時の悪魔と三つの物語CHAPTERS AVAILABLE

NOVEL · 简体中文

時の悪魔と三つの物語

時の悪魔と三つの物語。挿絵。

Open the book ↗
ゴッドイーター 禁忌を破る者CHAPTERS AVAILABLE

NOVEL · 日本語

ゴッドイーター 禁忌を破る者

ゴッドイーター 禁忌を破る者 挿絵 https://www.bilinovel.com/novel/768/115512.html

Open the book ↗
ファイナルファンタジーXIV 公式小説CHAPTERS AVAILABLE

NOVEL · 日本語

ファイナルファンタジーXIV 公式小説

ファイナルファンタジーXIV 公式小説。挿絵。出典:https://www.bilinovel.com/novel/770/115489.html

Open the book ↗
死者の学園祭 — Huangguo Reads